「ビジョン」が聞こえてこない業界(遊技通信2015年6月号より)

今月号でインタビューを掲載している徳島文理大学短期大学部の鍛冶博之氏は、遊技業界を研究対象とする数少ない研究者で、このたび、業界の健全化という観点からホール企業改革の姿を一冊の本にまとめた。
 
インタビューのなかで鍛冶氏が繰り返し述べていたのは、「企業改革はあくまでも企業単位の活動だが、その元には業界全体による健全化への潮流が存在している」ということだった。『健全化』というと、業界的には例えば各種の不正撲滅などを連想しがちだが、この場合は「イメージアップ」ぐらいに捉えるべきかもしれない。
 
例として、遊技業界で働く人たちを考えてみるとわかりやすい。筆者も学生時代に遊技場でアルバイトをした経験があるが、その頃と今とでは隔世の感がある。が、筆者がアルバイトをしていた時でも、よくいうところのボストンバッグ一つで渡り歩いている「パチンコ店員」は過去の話であった。今の新卒者には、自動車業界や金融業界と同じように就職説明会がなされ、有名大学卒も当たり前になっている。
 
業界で働く人たちの変遷は、まさに「企業改革は企業単位の活動だが、その元には業界全体による健全化への潮流が存在している」からこその変化だろう。採用する企業側も、新卒者を優れた社会人に育てるべく様々な研修プログラムを用意しており、鍛冶氏は、その際に重要なのは「採用側に強いビジョンがあるか」だという。ホール経営者にそのビジョンがあったからこそ、優秀な新卒者が入ってくる業界になったのだと考えたい。
 
ただし、これは過去の話になりつつあるのかもしれない。問題は今の業界にどのようなビジョンがあるのかだ。業界団体の総会などで掲げられるスローガンは単なる行動目標で、ビジョンではない。しかも、十年一日のごとく同じスローガンを掲げているようでは、逆に社会や時代の変化に対応しきれていないことを示している。
 
業界全体や業界団体に強いビジョンが存在し、それをもとに各企業がそれぞれのビジョンを策定し、企業活動を行う。こうした一連の流れがあって、遊技業界のイメージアップがなされるのが本来だろう。が、企業間の格差が拡大し、多団体時代となった今、具体論になればなるほど立場の違い、思惑の違いが表面化してしまい、結果的に業界全体でのビジョンを描けなくなっている。業界内の多くの人が共通して掲げるのは「身近で手軽な大衆娯楽」ぐらいだが、そうした指向の施策であっても、多くの業界関係者は「規制強化」として内心の反発を抱いているようにも映る。
 
厳しい言い方になるが、レジャー白書による参加人口の減少が下げ止まる可能性は、このままでは見い出せない。さらに、グレーゾーンと言われている遊技釘の問題や換金の問題をすっきりと解消させることも、このままでは難しい。なぜなら、この点に関するビジョンを誰からも聞かないからだ。
 
かつては、ビジョンを掲げる業界関係者がもっと多かったように思えるのだが、どうなのだろう。様々な課題に敢然と取り組んだ結果として、その後しばらくの成長や安定を得るという繰り返しが、このところ途絶えているのではないか。こうした現状に危機感を持ち、明確なビジョンを掲げるリーダーの出現に期待したい。

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