今回の件を無駄にしないために(遊技通信2016年8月号より)

今から十年ほど前に書かれた、当時の警察庁生活環境課長のエッセーを読み返してみた。カジノ解禁問題が話題になった頃のもので、文章ではカジノとぱちんこの本来的な違いに触れたあと、今後のぱちんこの方向性について「面白さを武器に多くのライトファンを対象とする業態への転換」や「映画やアミューズメントパークのような健全な時間消費型の娯楽」、「地域の特色を活かしたビジネスモデルの開発・定着」といったキーワードを並べている。
 
その中の「時間消費型娯楽」とは、射幸性を追求した遊技ではなく、遊技場で過ごす時間を有意義に感じてもらうことの対価として金銭を頂戴するモデルらしい。周知の通り、その後、低価貸営業は急速に普及し、今ではスタンダードな営業スタイルになっている。しかし、現状が課長が記した文章の本来的な意味とは、少し様相が異なっているのは明らかだ。低価貸コーナーがいくら拡大しても、本質的なところでは射幸性に頼った営業は十年経った今でも変わらず、そのパラダイムチェンジがいかに大変かを物語っている。
 
遊技くぎを巡る一連の出来事でも感じたことだが、産業の将来的な姿を想定したグランドデザインがないまま、行き当たりばったりの対応を繰り返していても、一向に埒が開かないのは、もはやはっきりしている。この十数年来の業界団体の活動を概観してみると、行政の指摘事項への対応に忙殺され、議論は百出しても、それは個別案件の対応方法に限った話であり、中長期あるいは広範囲な視点からのビジョンの策定には、残念ながら至っていない。
 
今回の一連の遊技くぎ問題でも、回収撤去が最優先課題であるのは当然としても、「遊技くぎ」そのものの取扱いについての話し合いは結局後回しになっている。これでは、いつまで経っても同じ問題を繰り返すだけだろう。くぎ調整など一切関知していない顔付きをすればするほど、いわゆるクレーマーに限らず、善良な世間の指摘にもウソをつくことになる。
 
くぎ調整が営業に欠かせないものであれば、これができる環境にするか、くぎ調整が不要な営業を確立するしかない。業界団体としては、市場環境をきれいにしてから話し合いを始めるということなのかもしれないが、現行法令の厳格な運用を徹底させている最近の行政が、解釈や指導をそう簡単に変更してくれるとは思えない。しっかりとした理論付けを背負って折衝、説得しなければならないテーマだ。そのためには、今から対応準備を整えるべきだと思うのだが、どうなのだろう。
 
本欄で何度も書いている通り、また、多くの人が指摘する通り、「遊技くぎ」の次に来るのは「賞品流通」だ。こちらはかつて、各業界団体がグランドデザインを描いたことがあったが、今の団体はこれについても何も語らない。
 
仮に現在の行政がことさら問題視していなくとも、インターネットに引っ張られるかたちで一般マスコミがこれを取り上げ、国会で問題視されると、行政は行政として強い姿勢を打ち出さざるを得ない。賞品問題で今回のような展開になった場合、果たして今の業界はそれに耐えられる状態なのだろうか。賞品問題は、機械問題の対応よりも遥かに難事だと思うのだが、悠長に構えていいものなのだろうか。
 
業界特有の曖昧さが残る要素が、今の社会の荒波に晒されるのは、本当に怖い。今回の件では、まずはそのことを学ぶべきだと思う。
 

 

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