2024.7.14

ダイコク電機が「DK-SIS白書2024年版 -2023年データ-」刊行記者発表会、4円パチンコの遊技時間粗利の高騰に改めて警鐘

ダイコク電機は7月11日、東京・水道橋の東京ドームホテルで「DK-SIS白書2024年版 -2023年データ-」の刊行記者発表会を開催し、2023年の業界総売上は15.7兆円(対前年1.1兆円増)、業界総粗利は2.54兆円(同1,600億円増)と発表した。

店舗数と総設置台数が減少する中で総売上・総粗利が増加し、前年比で5%以上の上昇を示したのは東日本大震災後から実に11年ぶりとなる。なお、DK-SIS白書は、業界に関わる前年度の出来事を同社のビッグデータ「DK-SIS」とともに振り返る業界唯一のデータブックで、創刊から21冊目。業界の総設置台数に対するDK-SISの保有データ(140.7万台)の市場シェアも41.1%と初めて4割を超えた。

冒頭に挨拶した栢森雅勝代表取締役社長は、「2023年を振り返ると様々な変化がかたち作られ、大きく花開いた年だったかと思う。遊技機の動きではスマートパチスロが人気を得て市場台数を広げた。スマートパチンコは機種の登場に留まったが、今のラッキートリガーの動きをみていると、やはり新しい面白いものでファンが動くと感じる。何かと話題の多い年だったが、一歩引いて全体の動きをみるとどんな変化が起きていたのか。そうしたことを明確にしていくための白書になっている」と本書を紹介した。

記者発表会では同社のMG推進部 SISプロフェッショナル・首席講師の片瀬宏之氏が、今年上期の市場動向も交えながら本書の内容を解説した。

パチスロ業績の大幅な上昇で業界規模が回復
業界総売上の内訳は、パチンコ8.2兆円(対前年約6,000億円減)、パチスロ7.5兆円(同約1.7兆円増)とパチスロが大幅に上昇した。業界総粗利の内訳は、パチンコ1.44兆円(同約800億円減)、パチスロ1.10兆円(同約2,400億円増)。総粗利ではパチンコの方がまだ大きいが、パチスロの上がり幅について片瀬氏は「スマートパチスロ(スマスロ)の勢いが表れている」とした。

経営上の指標である遊技機利益(業界総粗利-遊技機購入費)は1.74兆円(対前年約1,000億円増)。遊技機購入費は0.8兆円(同約600億円増)とホールにとって厳しい状況だったが、「パチスロの活躍によって残存利益が大きかった企業もあったと思う。遊技機を買わずにいた企業、投資してファンを集めた企業で二極化し、おそらく今年も閉店が増えると思う。店舗数の減少に伴って強い企業が残り、同時に店舗大型化も進むことで、業界全体の遊技機設置台数は下げ止まるのではないかと考えている」と分析した。

また、低貸しも含むパチンコ・パチスロ業績推移については、パチンコはアウト1万3,620個(対前年370個減)、売上1万4,919円(同285円減)、粗利2,479円(同15円増)と奮わなかった一方、パチスロはアウト8,091枚(同1,485枚増)、売上1万9,254円(同5,080円増)、粗利2,652円(同659円増)と大幅に上昇。パチスロは過去20年間で最大の上昇率となり、とりわけ売上・粗利はパチンコを逆転した。ただし設置シェアではまだパチンコが60.3%を占めているため、片瀬氏は「ファンに人気がなく売上も粗利も低い商品が店舗に数多く並んでいる状態といえ、歪な感じになっている。パチンコからパチスロへのシェア変更はまだまだ起きると想定している」とコメントした。

4円パチンコの遊技時間粗利が上昇し、アウトは過去最低を更新
4円パチンコのアウトは1万910個(対前年860個減)となった。コロナ禍で過去最低を記録した2020年のアウト1万1,040個を下回り、遊技時間粗利も1,440円に上昇した。タイプ別ではハイ・ハイミドルの台数シェアが62.7%まで上がったが、このうちハイミドルはアウト1万2,950個(同1,390個減)、売上2万5,777円(同1,595円減)、粗利3,640円(同99円減)と下落し、4円パチンコの軸が傾いた格好になった。

4円パチンコのアウトが過去最低を更新したことについて片瀬氏は「2021年と2022年はパチスロ6号機の不振もあって4円パチンコが回復傾向にあった。この間に遊技時間粗利を抑えてファンを定着させようと提案してきたが、遊技時間粗利はその後も上昇が続いたため、予想通りの結果が出てしまった」と説明した。

また、2024年上期データで4円パチンコはアウト1万800個とさらに落ち、遊技時間粗利も1,470円に上がっているため、2024年はアウトの過去最低値をさらに更新する可能性があるとした。特に現状では遊技時間粗利を抑える取組みが重要として「今年はラッキートリガー機やLT搭載のスマパチなどでファンの遊技意欲が出てきている時期にある。今こそ遊技時間粗利を改善しなければ、4円パチンコの回復はない。甘い活用は全部が全部というわけでなく、ファンが喜ぶ遊技機から1台2台など少しずつ、バランスを考えながら活用を変えていく。そうした取組みで3年ほどかけて業界全体の遊技時間粗利を下げていく必要がある」と改めて警鐘を鳴らした。

スマスロ効果で20円パチスロの業績が大幅に回復
20円パチスロの業績は、アウト8,037枚(対前年1,481枚増)、粗利2,882円(同699円増)と大幅に上昇した。遊技機総台数内の台数シェア33.9%(同1.8%増)、パチスロ内の台数シェア85.3%(同0.9%増)と、2023年は20円パチスロへのシフトが顕著だった。

タイプ別では、ほぼATで占めるスマスロによってATタイプの台数シェアは56.3%(対前年5.6%増)に上がり、20円ATタイプの業績はアウト7,455枚(同2249枚増)、売上2万4,157円(同8,636円増)、粗利3,024円(同986円増)と大幅にアップした。2024年上期データの20円ATタイプでもアウト8,220枚と好調さを維持しており、「いち早くパチスロ設置台数を増やして新台導入した方が業績向上していることがわかる。今年の下期は高コイン単価機種の登場が続くため、さらに売上・粗利は上がっていくと想定している」とした。

ただし、DK-SIS白書の付録に掲載されている「パチスロの20年間データ」をみると、高コイン単価機種が市場に増えるにつれて右肩上がりのアウトが下がる傾向があるため、片瀬氏は「単純に高コイン単価機種を増やすのでなくシェアコントロールしていかなければ店舗業績も業界全体のアウトも落ちていく可能性がある。新台導入する一方で減らすことも同時にやっていただければ」と提案した。また、20円パチスロのタイプ別平均の貢献度評価では、稼動貢献の償却達成率36.7%(対前年13.4%増)、貢献週11.2週(同0.5週増)と2023年データでは導入しても失敗のない状況にはなっているが、2024年上期に稼動貢献週10週を超える機種が比較的に少ないことから「これからまだスマスロのシェアは伸びていくと思うが、機種選定や導入台数を考慮しながら増やしていかなければ、これまでのように業績が伸びない可能性もある」と注意を促した。

スマート遊技機の導入が進むもパチンコ・パチスロで温度差
パチスロ内のスマスロ比率は、スマスロ初登場時の2022年11月の3.3%から右肩上がりに増えており、2024年3月には36.4%、6月時点では42.3%まで増加した。2022年11月から2024年3月までの業績推移でも、スマスロは常に20円パチスロ全体の業績を上回っている。

一方、パチンコ内のスマパチ比率は、スマパチ初登場時の2023年4月の1.2%から2024年3月に4.7%、6月時点で5.0%と苦戦している。ただし今後はLT搭載のスマパチ、またスマパチ性能の緩和などで良機が登場する可能性もあるため、「ファンの期待に応えるかたちでパチスロのように甘い活用ができるかどうかがパチンコの生き残りに関わってくると思う」とした。

以上のような2023年度の振り返りに加えて片瀬氏は、今後に役立つデータとしてDK-SIS白書に毎年掲載されている「損益分岐割数別業績」を紹介した。これは業界で先ごろパチンコ・パチスロ専用賞品の提供が認められたことに関連して取り上げたもの。損益分岐割数別の台数シェアや業績がまとめられ、損益分岐を上げることでパチンコの打開策になるかどうかといった検討にも役立つ内容になっている。

今後の課題解決に役立つ各種データもピックアップ
2023年データでは損益10割営業のアウト・売上が最も高く、遊技時間粗利が高騰している背景から粗利についても損益11割営業より損益10割営業の方が570円ほど高い。片瀬氏は、データからファンがどの損益分岐を好んで遊技しているかが見て取れるとして、スタートを回せる環境にするには損益分岐割数の変更よりも遊技時間粗利の改善を優先させる考え方を提案した。

また、「貸し玉料金を引き上げた営業を行っている店舗の比率推移」も紹介。現状のパチスロは千円31G程度のものが増えた上にコイン単価も高くなっており、このままいけばパチスロのアウトが伸び悩む可能性もあるとして、市場全体の70%を占めている千円46〜47枚貸しの再考を促した。2023年データでは、損益10割営業も損益11割営業も千円46枚貸しより千円50枚貸しの方がアウトが高い。ただし損益11割営業では千円46枚貸しの方が売上・粗利が高いため、「どちらを選択するかは店舗の判断に委ねられるが、こうした市場の状況もDK-SIS白書で確認してほしい」とした。

さらに「DK-SIS白書2024年版」の注目コンテンツとして「新台導入直後の機種業績推移(2週目平日初日まで)」の活用も紹介した。これはダイコク電機が提供するMGモバイル、Market-SIS、DK-SISの新機種登場時データについて、SISによる貢献判定基準の達成を交えてまとめて掲載したもの。例えばMGモバイルの導入初日17時稼動率で75%超であれば長期貢献する傾向があるが、様々な貢献判定基準をクリアした機種がわかるような一覧表になっている。

片瀬氏は「DK-SIS白書が手元にあれば、過去の良機の振り返り、また中古機導入や再設置などを検討する際に非常に便利な資料になっている」と幅広い活用をすすめた。

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