2022.11.24

余暇進秋季セミナーにおける警察庁生活安全局保安課課長補佐 講話全文

余暇環境整備推進協議会(余暇進)が11月22日に開催した令和4年度秋季セミナーで、警察庁生活安全局保安課の坂ノ上圭佑課長補佐が行政講話を行った。

(以下、講話全文)

皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり深い御理解と御協力を賜っており、この場をお借りしてお礼申し上げます。

本日の一般社団法人余暇環境整備推進協議会の令和4年度秋季セミナーにつきましては、3年振りの会場開催ということで、こうして会場において直接御挨拶を申し上げることができることとなりました。引き続きよろしくお願いいたします。

社会経済の再生という観点から、新型コロナウイルス感染症による様々な制限が緩和されつつありますが、未だにその終息の気配は見えておらず、最近もまた、感染者数が増加しています。ぱちんこ業界の皆様方におかれましても、依然として厳しい状況が続いているものと思います。そのような中、業界においては、店舗においてクラスターを発生させないという強い思いの下、業界で策定したガイドラインに沿って、あるいはそれ以上の工夫をして、対策を講じており、また、適切な情報発信等にも努めていると承知しており、皆様方の御努力に改めて敬意を表する次第です。ガイドラインについては、現在、政府の最新の方針を踏まえ、改定作業中であると承知していますが、引き続き、政府や各都道府県からの情報や要請等を十分に踏まえつつ、感染防止対策を徹底していただきたいと思います。また、製造業者、販売業者等の皆様方におかれましても、それぞれの業務に応じた対策を継続されており、引き続き、業界一丸となって、この危機を乗り切っていただければと思います。

さて、本日は、せっかくの機会ですので、ぱちんこ営業の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることについて、何点かお話をさせていただきます。

 

1点目は、旧規則機の撤去等についてです。

御存じのとおり、平成29年の国家公安委員会規則改正に伴う旧規則機の撤去に係る経過措置期間が、今年の春、全ての遊技機について満了しました。新型コロナウイルス感染症による影響はありつつも、大きな問題もなく順調に入替えが行われたと承知しています。これは、パチンコ・パチスロ産業21世紀会の決議の下、ぱちんこ営業者、製造業者、販売業者等が協力し、計画的な撤去を進めた結果によるものだと思います。改めて業界全体のまとまりの重要性を認識するとともに、これまでの皆様方の取組を評価したいと思います。

一方、撤去された遊技機については、いまだ相当数が倉庫等に保管されていると伺っています。過去にあった野積みのような問題を発生させないためにも、業界全体の責任として、遊技機の適正な廃棄処理の徹底をお願いします。

 

2点目は、ぱちんこへの依存防止対策についてです。

本年3月、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更が閣議決定されました。ぱちんこ業界については、変更前の基本計画に盛り込まれた各種取組を推進することにより、所期の目標を達成したと一定の評価がされています。その上で、今後は、これまでの取組の継続を前提としつつ、更に強化・発展させていくことが求められています。ぱちんこへの依存防止対策が後退したと捉えられることが決してないよう、変更後の基本計画に盛り込まれた各種取組について、引き続き、業界全体で真摯に取り組んでいく必要があります。特に、各種取組については、関係規程の制定や必要な仕組みの導入等のハード面の進捗は一定程度進んでいるところ、今後はそれらが実効的に運用されているかといったソフト面からの進捗も重要になってくると思います。

そこで、変更された内容も含め、具体的にいくつかお話しします。

まず、アクセス制限に関する取組として、自己申告・家族申告プログラムの導入促進等についてです。

自己申告・家族申告プログラムについては、本年10月末現在で約5,700店舗が導入していると承知しています。今後は、同プログラムの導入を前提としつつ、その実効性の確保や、必要な人が利用しやすい環境の構築が求められます。そのためにも、まずは、同プログラムの導入店舗数をより一層拡大することが重要です。業界として、導入店舗の拡大に向けて様々な取組を行っていることは承知しており、導入店舗数も着実に増加しています。しかし、未だに全体の導入率は約7割程度にとどまっており、また、都道府県ごとの導入率に大きな差があることも事実です。導入率が大きく向上した県や100%に到達した県がある一方、導入率が低調のまま改善が見られず、未だ50%程度という県もあります。「会員システムがないから導入できない」と主張する店舗もあると伺っていますが、会員システム等の特別なシステムを必要としない運用分類が業界において示されていることを踏まえれば、未導入の店舗については、依存防止対策に消極的な店舗であると見られ得ると思います。この点については、業界としての取組姿勢が問われていますので、未導入店舗における同プログラムの理解促進に努めるとともに、導入サポート体制を構築するなど、同プログラムの更なる普及が進むようお願いします。加えて、本人同意のない家族申告による入店制限についても、業界で策定したマニュアルにおいてその導入・運用方法が示され、また、大手企業が導入を推進していることもあり、本年10月末時点で約2,600店舗が導入するなど、導入店舗の拡大が進んでいます。しかし、全体的には、まだまだ普及が進んでいないように見受けられます。ぱちんこへののめり込み・依存問題について家族が助けを求めてきたとき、その声に業界として応える、そのための受け皿が準備されているかどうかということは極めて重要なことだと思います。ギャンブル等依存症対策基本法により設置されたギャンブル等依存症対策推進関係者会議においても、家族への支援の在り方が注目されています。各店舗において、家族からの切実な願いに誠実に対応することができるよう、同プログラムの更なる普及をお願いします。導入後の運用については、一般社団法人日本遊技関連事業協会が、申込み受付等の助言をする「家族申告プログラム助言機関」を設置しており、円滑な実施のための環境が整備されています。同プログラムをより充実させ、そして実効性を高めていくことを期待しています。また、複数店舗への一括申請を可能とするシステムの構築等、申請者の負担軽減となる取組の検討もお願いします。

次に、店舗に設置されているATM等については、順次、撤去等が推進されていると承知しています。ギャンブル等依存症対策推進関係者会議において賛同が得られるかや、社会一般からの視点も踏まえながら、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。

次に、依存症対策に係る連携協力体制の構築については、令和元年に、厚生労働省から各自治体に発出された通知を受けて、令和3年度末時点で、39の自治体で連携会議が開催されています。そして、ぱちんこ業界においても、連携会議に参画しているところがあると承知しています。依存防止対策については、関係機関と連携・協力して進めることが重要ですので、引き続き、連携会議への積極的な参画をお願いします。一方、自治体との連携を図る上では、連携会議への参画以外の方法もあります。この点、ある県遊協やホール企業の取組として、関係機関を巻き込む形で、依存問題に関する知識を深めるべく、セミナーを開催した事例もあると承知しています。こうした取組は、依存防止対策と真剣に向き合い、自ら積極的に関係機関と連携しているものと評価できます。こうした事例も参考に、関係機関との円滑な連携を確保するとともに、情報共有等を図ることで、依存症に苦しむ本人や家族のためにより有効な支援がなされるよう、取組を進めていただきたいと思います。

次に、ぱちんこへの依存問題やその対策に関する普及啓発については、昨年に引き続き、ギャンブル等依存症問題啓発週間にあわせて、パチンコ・パチスロ産業21世紀会が、特設ウェブサイト内において「パチンコ・パチスロ依存問題Webフォーラム」を開催し、通年視聴が可能な動画コンテンツを配信していると承知しています。こうした例も参考に、年間を通じた活動の推進により、のめり込み・依存に陥ってしまった方、大学生や新社会人をはじめとする青少年等、幅広い方に必要な情報が届くようお願いします。特に、遊技者の家族に対しては、早期に相談支援につながることができるよう、相談窓口の紹介をはじめとした普及啓発を図るようお願いします。

次に、自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援については、令和元年11月に一般社団法人パチンコ・パチスロ社会貢献機構が設立され、本年度も9団体に対して助成を行うものと承知しています。引き続き、ぱちんこへののめり込み・依存の予防と解決に取り組む団体等に対する積極的な支援をお願いします。また、リカバリーサポート・ネットワークにおいても、ぱちんこへののめり込みや依存の問題を抱える本人及び家族に対する個別相談事業を行っているところ、ぱちんこ業界全体で継続的にその活動を支えていただくようお願いします。

次に、業界の取組に係る第三者機関の活用については、第三者機関として、パチンコ・パチスロ産業依存対策有識者会議が設立され、毎年度、業界の取組について、専門的かつ第三者の視点から評価・提言がなされていると承知しています。ぱちんこへの依存防止対策について、第三者の視点を取り入れることは、その実効性確保の観点から重要であり、PDCAサイクルに基づき業界の取組を改善していくことにもつながります。引き続き、有識者会議を積極的に活用し、依存防止対策を推進するようお願いします。また、同じく第三者機関の活用としては、一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査によって、ぱちんこ営業者ごとの取組の確認がなされています。このような第三者機関によるチェック機能を活用し、ぱちんこへの依存防止対策について、業界全体というマクロの観点と営業者ごとのミクロの観点から、推進・改善をお願いします。

以上、ぱちんこへの依存防止対策についてお話ししました。業界においては、早い時期からのめり込み・依存の問題に対処されてきたと承知しています。しかし、この問題については、依然として多くの方の高い関心が集まっており、業界としての取組が注目されています。厳しい状況が続きますが、今一度、ぱちんこには、人を引き付ける大きな力があること、それ故、人によっては、遊技が過度になってしまい、負債等の問題にまで至る場合があることを再認識していただきたいと思います。そして、ぱちんこが潜在的に持つ負の側面を防止・抑止するよう努力していただくこと、たとえ、ぱちんこへののめり込み・依存で困っている方が、店舗に来られる方の一部であったとしても、現実にそうした方がいるということを踏まえ、問題解決に向けて業界全体で真摯に取り組んでいただくようお願いします。

 

3点目は、遊技機の不正改造事犯の絶無についてです。

ぱちんこ営業所において遊技くぎを曲げて検定機と異なる性能を創出する事案は、毎年継続して発生しており、本年も複数の検挙事例があります。これまでも、そのような事案は射幸性の適正管理を侵害する悪質な事案であると繰り返し申し上げていますが、依然として、客寄せ等の営業者の身勝手な都合により、メンテナンス等と称してくぎを曲げる事案が後を絶ちません。貴協議会におかれましては、引き続き、正しい認識を全国の会員に理解していただくよう周知徹底を図ることはもとより、業界全体をリードして、こうした問題の絶無に向けて取り組まれることを期待しています。

このほか、悪質巧妙化している不正改造については、これに対処するため、ぱちんこ営業者と製造業者の垣根を取り払い、事案の情報共有や有効な防止対策を業界全体で模索し、効果的な施策をより一層推進していただきたいと思います。

この点、遊技産業健全化推進機構の活動については、業界の健全化に欠かせないものです。機構は、活動開始以来、立入検査店舗数が本年9月末までに延べ約35,000店舗を超え、また、検査台数も約25万台を上回るなど、精力的に活動を続けています。新型コロナウイルス感染症の影響で、立入件数が減少していると伺っていますが、それでもなお、未だに不正改造等の容疑が認められたとして都道府県警察に通報がなされる事案が散見され、実際に、機構の立入検査を端緒に検挙に至った事例もあります。業界として、引き続き、緊張感を持って不正改造の絶無に向けた取組の推進をお願いします。警察としても、今後とも、機構と積極的に連携しつつ、不正改造事案に対しては、厳正な取締り等を推進していきます。また、機構においては、先ほど申し上げたとおり、ぱちんこ営業所における依存防止対策の実施状況調査を行っており、機構による調査を受け、対策状況の改善が促されるといった成果も出ていると伺っています。このように、機構は様々な面で業界の健全化に貢献していると考えられますので、引き続き、業界全体で機構の活動への協力・支援をお願いします。

 

4点目は、遊技機の流通における業務の健全化についてです。

遊技機の流通過程において型式の同一性が担保されるよう、中古遊技機については、中古機流通制度に基づく取組が実施され、新台設置や部品交換については、「製造業者遊技機流通健全化要綱」等に基づく制度の定着が進んでいると承知しています。一方で、遊技機の部品を正規の部品以外に無承認で変更する事案等が後を絶ちません。今一度、製造業者、販売業者等の遊技機の流通に携わる関係者の皆様方が、それぞれの場面で適切な点検確認等を実施していただき、少なくとも出荷や流通の過程においては、部品取りのような不正は発生しないこと、そして、型式の同一性が保たれていることをしっかりと担保していただく必要があります。特に、製造業者等が作成する「保証書」については、製造業者等が、設置確認や点検確認をする前提のもと、遊技機の型式の同一性を疎明する書類として認められているものですので、万が一にも、これらの確認や保証書の作成が杜撰に行われることがないよう、今一度、遊技機の流通に携わる関係者におかれましては、こうした点を含めて正しく制度を理解した上で、取組の継続をお願いします。

 

5点目は、賞品買取事犯の根絶についてです。

賞品買取行為の規制違反は、本年においても既に複数の事案が検挙されています。賞品買取行為の規制は、ぱちんこ営業と賭博の一線を画す上で重要なものであり、ぱちんこ営業の根幹に関わるものです。警察としては、引き続き賞品買取事犯の厳正な取締りを行っていきますが、貴協議会におかれましても、今一度、営業者一人一人にまで、賞品買取行為の規制の重要性を周知徹底していただくようお願いします。

 

6点目は、広告・宣伝の健全化の徹底についてです。

広告・宣伝の規制については、現在、ホール4団体による広告・宣伝ワーキングチームと意見交換を行っているところであり、業界からの要望を踏まえつつ、各店舗において時代に即した広告・宣伝を行うことができるよう必要な検討を行っています。その上で申し上げれば、業界においては、まずもって、広告・宣伝がぱちんこ営業者の遵法意識を写す鏡であり、また、一般の方のぱちんこ業界に対するイメージに大きく影響を与えるものであるということを改めて認識していただく必要があります。業界においては、営業の健全化に加え、新規ユーザーの開拓が大きな課題になっていると承知していますが、一部のヘビーユーザーやマニア向けに、隠語を用いた脱法的な広告・宣伝を行うことがそのような課題の解決にとってプラスになるのかという観点から、この機会に、業界として広告・宣伝の在り方について考えていただくようお願いします。また、依存防止対策の観点からも広告・宣伝の在り方が問われているため、業界自らの取組によって広告・宣伝の健全化を進めるよう努めていただきたいと思います。

 

最後に、業界の社会的地位の向上のための取組についてです。

業界においては、社会貢献活動の一環として、防災活動や災害対応の支援、社会福祉施設への支援、地域の清掃活動等の地域に根ざした活動を多岐に渡って展開していると承知しています。ぱちんこ営業が店舗性を有するものであることを踏まえれば、地域社会との関係を如何にして築いていくかという視点は、業界の社会的地位の向上に重要であると考えられますので、引き続きの活動を期待します。

また、業界においては、これまで、ぱちんこ営業所の駐車場における車内放置による子供の死亡事案の絶無のための取組を推進しており、平成29年を最後にそのような事案は発生していないと承知しています。一方、最近、ぱちんこ営業に係る事案ではありませんが、通園バスや保育所の駐車場の車両に子供が置き去りにされ亡くなられるという痛ましい事案が発生しています。このような事案は一度発生してしまうとそれに対する批判は計り知れないことから、業界においては、これまで推進してきた取組の内容を今一度確認するとともに、各ぱちんこ営業の現場にまで取組が徹底されるようお願いします。

 

以上、ぱちんこ営業の健全化を推進する上で特に留意していただきたい点についてお話ししました。

新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、遊技人口も減少傾向にある中、ぱちんこ業界の皆様方におかれましては、大変御苦労が多いことと思われます。ただ、このような状況だからこそ、広く国民に憩いと潤いの場を提供するような、健全なレジャーとしてのぱちんこのあるべき姿を追及してほしいと思います。そのためにも、まずは、ぱちんこへののめり込みや依存問題をはじめとする課題の一つ一つに、業界が一丸となって、迅速かつ真摯に対応していただくことが重要です。その上で、新規則機を活用し、リアル空間の良さも活かしながら、地域の方が安く安心して遊べる遊技環境を創出する業界となるよう、今後のぱちんこ業界の皆様方の御努力に期待します。

結びに、貴協議会のますますの御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念して、私の話を終わります。

 

警察庁生活安全局保安課

課長補佐 坂ノ上圭佑

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