2025.10.21

【メルマガWeeklyコラム(10月14日付け)】淘汰の先に残る者:スケールと地域性、二極化する生存戦略

長期的な縮小傾向が続くパチンコ業界だが、近年、廃業ペースが鈍化している。市場全体は依然として難しい局面にあるものの、「底打ち感」を指摘する声も少なくない。では、この段階でどのような形の残存者利益が成立しつつあるのか。

一般に残存者利益は二つのタイプに分けられる。

ひとつは、寡占化によってスケールメリットが発揮される集中型残存者利益である。コンビニ業界が典型で、淘汰を経て上位数社に市場が集中し、物流・情報投資・PB開発といった面で利益構造が強化された。もうひとつは、縮小市場の中で独自性を発揮する分散型残存者利益。書店業界では、大手チェーンが退いた後に、選書型・体験型などの独立書店が再評価され、文化的価値を武器に安定収益を得ている。

パチンコ業界でも、この二層構造が生まれつつある。

大手チェーンは、機械購買のスケールメリットを活かして営業基盤を整備している。システム投資とデータ分析によって、安定的な稼働を実現している。一方で、地域密着型ホールは、常連客を中心とした「コミュニティ拠点」としての機能を強めている。店長の顔が見える店舗運営、地元イベントとの連動、SNSによる関係性強化、これらが稼働率の底支えとなっている。

ただし、パチンコは自由競争型ビジネスではない。出玉性能・広告表現・営業時間に至るまで(自主規制を含む)法規制が存在し、営業方法やサービス提供の差別化には限界がある。そのため、経営効率と顧客維持力の差が、そのまま収益格差になるという特徴がある。設備投資の精緻化、オペレーションの標準化、シフト管理の最適化といった、 “見えない競争”が残存者利益の実体である。

つまり、現在の「踊り場」とは、単なる衰退の一時停止ではなく、規制環境下で形成されつつある新しい均衡点といえる。スケールによる効率化を進めるチェーンと、地域密着によって関係資本を積み上げる独立店。市場は二極化しつつも、どちらにも利益機会が生じている。

淘汰の果てに残るのは、構造を握る者と意味を再定義する者。その二者が次の時代のパチンコ業界を形作っていくだろう。

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