2025.5.27

【メルマガWeeklyコラム(5月19日付け)】静かに、着実に、膨張を続ける巨大な闇市場

日本経済新聞や毎日新聞など報道各社が5月14日に一斉に報じたのが、日本国内から海外のスポーツベッティング市場に投じられた実態だ。業界団体が同日に行ったシンポジウムで発表したのだが、2024年には年間で6兆4,503億円が流出したそうだ。

静かに、しかし着実に膨張を続ける巨大な闇市場といえる。東京オリンピック後も、冷めやらぬスポーツ熱。しかしその熱は合法的なチャネルだけでなく、規制の目をすり抜ける形で違法な賭博行為へと流れ込んでいる。

その業界団体はスポーツエコシステム推進協議会というもので、代表理事/事務局長を稲垣弘則氏(西村あさひ法律事務所 弁護士)が務め、評議員には、オリンピックのメダリストや各プロスポーツリーグ関係者が名を連ねている。また会員にはメディア各社やスポーツ関連企業、金融機関が加盟しており、スポーツ関係のデータや権利に関する組織体であることが分かる。

2024年の国内居住者による海外スポーツベッティングの総額6兆4,503億円のうち、日本のスポーツを対象とした金額は1兆183億円だった。この数字は小さく見えるかもしれないが、同時期のスポーツ振興くじの売り上げ1,336億円を大きく上回っていることを考えると、決して軽視できないし、その規模の大きさに愕然としてしまう。

一方で、国内外から日本のスポーツを対象にした賭け金も総額4兆9,112億円に上った。金額の半分以上はJリーグなどのサッカーを対象としており、ほかにプロ野球やバスケットボール、テニス、バレーボール、ラグビーなどもある。

目を引くのは、日本居住者が海外のスポーツに賭けた5兆4,319億円と、海外居住者が日本のスポーツに賭けた3兆8,928億円という金額の大きさである。カジノのスポーツベッティングコーナーに行けば分かることだが、賭けの対象には国境は存在しない。かつてラスベガスで体験したことがあるが、日本で行われているスポーツが既に対象となっていたし、上記以外にも相撲(厳密にスポーツと言えるかは微妙だが)などがあったと記憶している。

海外ではスポーツベッティングが合法化され巨大産業となる一方、日本では刑法上の賭博罪に該当する行為が急増している。インターネットの普及により、誰もがスマートフォン一つで国境を越えた違法賭博に容易にアクセスできる時代である。「合法国のライセンスを持つサイトだから大丈夫」という誤った認識も広がっている。欧州評議会が主導する「マコリン条約」など国際的な枠組みも動き出しているなかで、日本での議論を導くためのアドバルーン的なニュースリリースなのかもしれない。

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