2024.11.19

【期間限定公開】ホールに再就職したい人材は貴重 ブランク期間を埋める説明が功を奏す

よく知られる御伽話に「浦島太郎」があります。ほとんどの方があらすじを知っていて、最後にどうなったかも覚えていることでしょう。竜宮城から戻ってきたら現実世界では何百年も経っており、自分だけが取り残されてしまっていたということにちなんで、“浦島太郎状態”といった表現も広く使われています。

なぜこんな話をしたかというと、一度パチンコ業界を離れたものの戻ってきたいと望む人が最近増えており、その多くの方が“浦島太郎状態”だからです。そこで今回は、そのような求職者のマインド、受け入れる企業の方針などを考えていきたいと思います。

ホールに再就職したい人は 業界に良いイメージがある

日本で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは、2020年1月のことです。あっという間に感染が拡大し、パチンコ業界も大打撃を受けました。ホール法人数は2019年に約2,000ありましたが、2022年は約1,500に減少。実に25%も減ったのです。

当然、この間に多数の人がホール企業から離職。なかには、業界と自分の将来を悲観して自主的に去った方もいたはずです。稼働率がガクンと落ち、復活する見込みがなく、世間からはいわれのないバッシングを受けましたから、これでネガティブにならないほうがおかしいでしょう。

退職した人たちの多くは他業界で働き始めるわけですが、必ずしも給与や待遇に満足するわけはありません。そういった人の中から、最近になって「またホールで働きたい」と希望する方が増えているのです。

話を聞いてみると、「業界が盛り上がっている」「活気が戻ってきた」というイメージがあるとのこと。メーカーのテレビCMを目にしたり、スマスロが好調という話を小耳に挟んだりして、離職時とは真逆のポジティブな印象を受けるようです。

業界に再就職したいという人は、企業にとってもありがたい存在。私も力になれればと思っているのですが、ここにちょっとした問題があります。それが“浦島太郎状態”であり、パチンコ業界、ホール企業、遊技機などの知識がなさすぎるのです。特に、「この企業に入社して良いのか」と悩んでしまい、決断が鈍る傾向があります。

詳細説明が不安を払拭し 入社の気持ちを後押しする

採用する側の企業の大半は、自社の価値観を理解し、早期に活躍が見込める即戦力が欲しいと考えます。その点では、“浦島太郎状態”の人材は経験者といえども今の市場に合わせた営業感はなく、即戦力かと言われると疑問符が付くところ。しかし、一から教えるという手間はない上、働き方に対する理解もあるはずですから、昨今の採用難を考慮して採用要件を緩和する企業も増えつつあるのです。

求職者からすれば、昔取った杵柄とはいえ新たに覚えなければならない事柄も多く、不安があるもの。パチンコ業界に良いイメージを抱いて再就職を希望していますが、あくまでも主観ですから事実と異なっているかもしれないとも思っています。

そこで、採用担当の方にお伝えしているのが、「求職者のブランク期間を含めて、自社のことを詳しく説明してあげてください」ということです。店舗数、稼働、売上といった数字を2019年から現在まで開示することで、「なるほど、この企業なら安心して働ける」と思ってもらいたいわけで、特に稼働は離職時の不安材料ですから、もし自店が良くなくても企業全体ではかなりの水準であることなどを示したほうが良いでしょう。そこに、コロナ禍で行った施策、安心・安全を提供する具体例などを加えたいところです。こういう努力によって自社は生き残ったということが伝われば、魅力を感じてもらえるはずですから。

さらに、将来の展望とともに、だからこのような人材が必要だと説明すれば、「その人材とは自分のことだ」と納得し、入社に前向きになる可能性が高くなります。現行の遊技機や最新設備、業界全体の広告宣伝ガイドラインのことなどは、内定や入社が決まってから説明しても遅くないはずです。

ブランクがあるからこそ 貴重な人材になりうる

一度業界を離れた人材を採用するのは不安だという企業は当然あります。しかし一方で、積極的に採用しようと戦略を立てて体系化している企業も増えつつあるのです。

というのも、そういった人材はパチンコ以外の業界を経験しているから。その業界と比較してホールのほうが良いと判断して再就職を望むわけですから、再び他業界に流れるリスクがないとの見方も出来ます。他業界を反面教師として、自社のプラスになる提案をしてくれるかもしれませんし、他業界の良い点を自社にもたらせてくれるかもしれません。

採用する側もされる側も、多少の不安があるのが当たり前です。面接時などに、お互いが欲しているであろう情報を提供し合えれば、かなりの確率で上手くいくことでしょう。企業と“浦島太郎状態”の人材がwin-winになることは、さほど難しくないはずです。

さて、御伽話の「浦島太郎」は、お爺さんになってしまったところで話が終わる、と認識している方が多いことでしょう。これは、1896年に発表された「日本昔噺」を改変した話が明治から昭和にかけて教科書に掲載され、一般に広まったからです。もっと昔の「御伽草子」の中では、亀と乙姫は同一人物であり、浦島太郎は玉手箱を開けた後で鶴になり、亀と仲良く暮らしたというハッピーエンドになっています。“浦島太郎状態”の人材のストーリーは、企業次第ではないでしょうか。

 

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。

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