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- 【期間限定公開】人材を平等に評価すること 人事を納得してもらうことが重要
スポーツ観戦をしていて心を揺さぶられるのはよくあることです。ボクシングの井上尚弥選手のKOに拍手喝采したり、応援しているプロ野球チームの優勝にガッツポーズをしたりといったことは、誰しも経験があるのではないでしょうか。
一方で、勝者ではなく、敗者の姿に思わずジーンとなるのもよくある話。今夏は、パリ五輪の柔道で一本負けをした阿部詩選手の号泣シーンや、バタフライの準決勝で敗れた池江璃花子選手の「頑張ってきた分だけ無駄だったのかな…」という涙ながらのコメントに、もらい泣きした人もいたに違いありません。
本人は、結果を残せなかった試合やレース後、絶望感にさいなまれているはず。心が折れてしまっているかもしれません。傷の深さは本人にしかわかりませんが、心中は察するに余りあります。
さて、今回ピックアップするのは、ホール企業で昇進という結果を残せなかった人材の内面と、会社側の対応についてです。「自分が人材側であれば、どんな気持ちになったか」と想像しながら、読み進めていただけたらと思います。
必死で頑張り1位を獲得したが 昇進したのは別の人…
少し疲れた様子で当社を訪れたのは、30代の青木さん(仮称)でした。以前はホールに勤務、現在は異業種で汗を流しているのですが、給与面や将来性を考えると不安。ホール企業に再就職したいが、退職した当時を思い出すと迷いが生じてしまうとのことです。そこで、経緯を詳しく聞いてみることにしました。
まず、新卒でホール企業X社に就職。しかし、家庭の事情により退職せざるを得ず、しばらく宙ぶらりんの日々を送ります。その後、家庭の事情が解消されていくにしたがって、ホール企業Y社でアルバイトを始め、社員となり、ホール現場をまとめるリーダー職へ昇格。そして月日が経過していく中で、Y社での自身の将来について考えることも増え、「まだ独身だが、この収入で結婚して家庭を持てるのか?」と思っていたようです。
そこで、もっと働いて出世して、収入アップを目指す決心をします。上司に意気込みを伝えるとともに、どうすれば早く昇進出来るのかアドバイスを求めると、「通常業務を頑張るのは当然として、定期的に行われる社内試験で上位の成績を残すことが重要だ」という返答。大いに納得し、青木さんのやる気スイッチが入ります。
ホール現場では誰よりも早く出社して「出来ること」を増やし、家に帰ってからは机に向かう毎日。そんな姿を見ている仲間たちから「すごく頑張っている」と、より信頼されるようになっていったようです。そして、運命の試験では上位どころか1位を獲得し、同僚や後輩たちから「もうすぐ昇進ですね」と言われるように。
しかし、青木さんは昇進出来ませんでした…。一方で、同じ店舗に勤務するAさんは昇進。職場内で誰が何を言うわけではありませんが、「あんなに頑張ってもダメなのか」といった空気が漂ったようです。
不可解な人事の理由を聞くと 上司から「わかるだろ?」
青木さんは茫然自失。この1年間は、「それまでの人生で最も頑張ったと断言出来る」と振り返りました。四六時中、仕事のことを考え、無我夢中でやり切る。常連客からは温かい言葉をもらい、ほかのスタッフからは昇進確実だと言われました。青木さん自身もプロセスと結果に自信があり、昇進への期待も大きかったため余計にがっかりしたようですが、同時に「なぜ?」という疑問が強まっていきました。
納得がいかない青木さんは、上司に理由を聞きに行きます。すると、返ってきたのは「わかるだろ?」の一言。思い当たる節といえば、自分がアルバイトからスタートしたのに対し、昇進したAさんは大学新卒で入社した社員ということだけでした。上司から詳しい説明はなく、なかなか切り替えることが出来ずにモチベーションは低下したまま…。
「自分は、この会社ではどうやっても店長などにはなれないと理解し、心が折れ、退職を決意したのです」と経緯を語り終えた青木さんの目には、うっすらと涙。私も、しばしの間、言葉が出ませんでした。
「Y社が新卒採用に四苦八苦している状況は知っていたので、組織として新卒社員を優先したんだと自分を納得させようとしましたが、気持ちがついていかなくなった…」と、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていました。
明らかに不平等な評価は 会社を駄目にするおそれあり
上司は、青木さんが一生懸命頑張っていたことはわかっていたはずですし、試験で1位になったことは職場で周知されていたのですから、掛ける言葉に気を配るべきだったのではないでしょうか。「今回の結果は非常に残念だったが、君の努力は本当に素晴らしい。来年こそ昇進すると自分も信じている。ぜひ、努力を続けてほしい」といった感じで。
「中途入社の人は、どんなに頑張っても出世出来ない」という不文律が広まれば、青木さんのように退職する人が出てきてしまいます。アルバイトや若手社員がやる気をなくす可能性も大きいでしょう。キャリアアップしたいとやる気に満ちた人材は貴重ですし、そういった人が活躍出来るようでないと、将来的に会社が傾いてしまうおそれもあります。新卒でも中途でも、人材は会社にとって財産であることに変わりはないはずです。
阿部詩選手も池江璃花子選手も、すでに気持ちを切り替え、4年後を見据えているとのこと。青木さんは努力家で優秀な成績を収められる人ですから、私としては前を向いてもらえるように言葉を紡ぎ、マッチする企業に巡り合えるよう奔走しているところです。
筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
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