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- 【期間限定公開】自分の想いや主張を言えない文化は 離職のトリガーになるおそれあり
「人」は、法律では自然人と法人に分けられています。前者はあまり馴染みがないかもしれませんが、私たち個人を指すもの。後者は、会社などが当てはまります。学校法人や宗教法人という言葉もあるので、自然人よりは耳にする機会が多いはずです。
法人は、権利や義務の主体となれることを認められた組織。もし認められなければ、会社が土地や建物を所有することが出来ませんし、売買契約も出来ません。自然人と大きく異なるのは個人の集合体であり、意思決定には会議や株主総会などが必要であること。ワンマン社長が単独ですべてを決めるのはかなり特殊なケースで、ほとんどの法人は大なり小なりのミーティングを行う合議制を採っています。
今回は、そういった法人の在り方、それに付随する離職に関して考えてみましょう。
説明不足の会社に募る やりきれない想い
先日、転職希望の大久保さん(仮称)が相談に来社しました。勤務先は、複数の県でホールを展開している中堅企業Z社。30代の独身男性で、すでに10年近く働いており、主任を務めています。Z社は高待遇が有名で、労働環境や給与面に不満を持つ人は少ないため、転職動機が気になるところです。
大久保さんは、一言で言うと仕事熱心。部下の管理もしっかりしており、今日の業務内容を伝え、終業時には出来たかどうかを確認していました。これは、会社や上長からの指示ではなく、円滑に仕事を進める上で必要だと自分で判断し、取り組んでいるものです。しかし、大久保さんが休みの日はその機能が止まってしまうようで、部下から愚痴を聞くこともしばしば。チームとして一枚岩になれていないと感じながらも「真面目に働いているのは自分だけかもしれない」と疑心暗鬼になってしまいました。
しかし、会社を辞める理由としては弱すぎます。ほかの不満を聞いてみると、やはりありました。
「解釈によるのかもしれませんが、いいように使われていると感じています。まるで捨て駒…」と苦い表情。異動があるのは当然だと理解しており、二つ返事で受け入れてきましたが、異動回数を重ねるごとに会社側の対応に誠意がなくなってきたというのです。
極めつけは、自宅から片道2時間近くかかる距離にもかかわらず「車もあるし社宅を準備する必要はないだろう?」と無理難題を押し付けてきたこと。仕事に集中するためにも社宅を利用するつもりでしたが、そのやりとりにうんざりするように…。
ましてや異動の背景を聞いても、「決まったことなので」の一言で説明らしい説明はありません。Z社の店舗は規模も立地もバリエーションに富んでいるので、例えば「大型店で多数のスタッフに指示を出すことを学んでほしい」とか「駅前の小型店で、常連客を逃さないコツを勉強してほしい」といったことを言ってくれれば納得して前向きに臨めるというのに、全く何もないのです。
さらには、半期ごとに下される査定は通達されるだけで、何が良くて何が悪かったかなどは不明。直属の上司に聞いても「上が決めたことで、自分もわからない」という反応で、詳細はわかりようがないのです。
組織が徐々に衰退していく 危うい形式主義な文化
話を聞いていて、大きな疑問が湧いてきました。小さな不満は上司に相談すればいいし、意見があるならミーティングの場で発言すれば済むのではないかと。大久保さんにそれを伝えると、意外な反応が返ってきました。
「えっ、……考えてもいませんでした」と驚いた様子だったのですが、それに私も驚いてしまい「えっ、話し合いの場はないのですか?」と即座に質問してしまいました。答えは「そのような場はありません」。組織とのコミュニケーションが風上から風下への一方通行で、「それが会社のルール」と自分に言い聞かせてきた、ということでした。
大久保さんの転職動機の本質は、「形式主義な組織への不信感」です。意見を言える場がなく、上からの通達で終始する。溜まりに溜まった疑問は解消されず、不満という形で器から零れ落ち始めたのです。色々と聞いていくうち、キャリアアップの願望があり、店長になったらこういう体制でこういう店を目指したいという具体的な想いがあることもわかりました。しかし、そういった胸の内を明かす場所がないのです。店長になる条件や、昇進の近道、何をすれば良いのかといったことを聞くことも出来ません。
人間同士は絆でつながる 法人と自然人は?
を整えても若手が定着しなくなったのは、「運用管理」の段階で問題が生じているのではないでしょうか。
それが会社組織全体としてのことなのか、部門間でのことなのか、一部の店舗限定なのかはわかりませんが、いずれにしても言いたいことを言えず、コミュニケーションを拒絶された、と感じられた可能性も。そして、これが当たり前になってくると「悪しき文化や風土」として定着してしまうのです。
法人は自然人の集合体です。人肌を感じられない法人は、自然人が離れていくのも当然かもしれません。働きやすい制度を整えていても、「単なる労働力」と感じられてしまっては「いずれ人心は離れる」という、一つの事例と言えるでしょう。

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
※これまで掲載された「現場視点からみる業界の『人材課題』」のアーカイブをはじめ、マークが付いている「プレミアム記事(有料プラン)」は、https://www.yugitsushin.jp/category/premium/から閲覧できます。
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