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- 【期間限定公開】転職によって物価高を乗り越えるより 牛丼を手作り弁当に変える時代が到来!?
物価高が止まりません。電気、ガス、水道といったインフラから、コメ、野菜、肉などの食品、ガソリンまで値上がりし続けています。ロシアによるウクライナ侵攻、長引く円安などが主な原因ですが、我々個人がそれらを解決することは出来ず、ただただ実質賃金の低下を受け入れるしかないという状況です。
わかりやすいのは、サラリーマンの味方とも言える牛丼の値段でしょう。安く早く提供してくれるので昼食に持ってこいなのですが、ここ数年の値上げは驚くものがあります。ある大手チェーンの牛丼並盛の値段を見てみると、ずっと380円だったものが2021年から毎年値上げされ、426円、448円、468円、498円と推移しました。4年間で118円、パーセントにすると実に31%も値上がりしているのです。
この4年間で、皆さんの給料は31%も上がったでしょうか? お父さんであれば、小遣いが31%も上がったでしょうか? 電気代の請求書を見るよりも、昼食代が財布を圧迫し始めたことを目の当たりにし、実質賃金の低下を実感している人が多いかもしれません。
今回は、これに起因する転職と、それにまつわる将来の見通しなどについて考察してみたいと思います。
実質賃金の低下は 転職動機にも影響する
当社調べですが、この半年ほどで、“近い将来の収入と支出”に対する不安を理由とした転職希望者が急増しました。10年以上前は「現在の給与に不満」や「労働環境に不満」、コロナ禍は「パチンコ業界の将来が不安」が主な転職理由でしたが、今は「現在の職場環境や給料に不満はないが、将来が不安」だというのです。その大半を占めているのが、結婚を望んでいる人、数年後に子供が進学する人など、支出の増加がほぼ決まっている人たち。物価が上昇し続けているのに現在の給料のまま“その時”を迎えると考えれば、不安になるのも当然でしょう。
その時期が3~5年後なら、それまでにキャリアアップして給料もアップすれば問題ないようにも思えますが、ホール企業のポストは限られており、これが大きな障壁となっています。1店舗に店長は1人しかいませんから、店舗が増えるか、ポストに空きが出ない限り店長職には就けません。ほとんどの企業で役職と給料はニアリーイコールで結ばれているので、主任のままで給料は店長に匹敵することは稀です。
こういった現実を改めて見つめ直すと、「このままでは、キャリアアップも給料アップも無理」となり、期待を持って同業界や他業界への転職を考えるのは自然な流れと言えるでしょう。
望みの企業に入社出来ても 安定が約束されるわけではない
ホール企業のなかには、業界トップの待遇を目指しているところや、物価に合わせて給与ベースをアップしているところもあります。将来の不安を抱えた転職者は、そういった企業を目指すわけです。
しかし、望み通りの企業は絶対数が少なく、アプローチしたとしても採用されるとは限りません。また、優良企業であっても資産が無限のわけはなく、人件費にも限界がありますから、今後も実質賃金が下がらないように配慮が出来るとは限らないのです。一方で、物価高が収まる気配はありません。
以上のような理由から、転職で将来の不安を完全に払拭するのは不可能に近いと言えます。となると、全く異なる方向性を考えておくのが良さそうです。個人の知恵や選択によって生活が豊かになるように工夫する、といった感じで。
国も舵を切り始めた!? 生活保障は個人で形成する時代に
キャリア・パスポートをご存知でしょうか。文部科学省が2020年4月に導入したもので、小・中・高校の9年間、生徒が自分の強みや弱みなどを把握し、将来の夢を見つめることを目的としています。小さい頃から、将来の仕事や自分がどうなりたいかを考え、記録に残すのです。現在働いている大人であっても、同様のことをやってみるのは悪くないと思います。もちろん、何年もかける必要はありませんが。
収入を増やすうえで健全かつ最も確実なのは「労働・生産・創造」で、具体的には“副業”が挙げられます。2022年に経団連が公表した調査結果では、日本企業の副業導入率(容認)は約53%。働き方の多様化や人材の流動化、自律的なキャリア形成促進などを目的に政府が推進した結果でしょうか。当社の転職相談者でも、個人事業主として独立、もしくは会社組織に所属しながら一つの仕事にとどまらず、本業の時間外を有効に活用し、別の仕事で稼いでいる方も一定の割合でいます。
また、資産運用(投資)という方法もありますが、“不安”の背景を考えれば得策とは言えないでしょう。当座コスト(毎月発生する支出)と予定コスト(将来の支出に対する備え)を考えての不安なのですから、そもそも投資する余力がありません。予定コストを投資に回し“必要時期に必要額に満たない”という失敗は許されないのです。それなら、ファイナンシャルプランナーに相談して、保険の見直し、住宅ローンや投資運用に関するアドバイスを受けるほうが堅実でしょう。
いずれにせよ、会社が個人のキャリア、生活の両面まで考え、道筋を立てるのには限界がきているのかもしれません。個人が考え、その方針を企業がアシストする時代となる可能性が十分にありそうです。
手始めに、昼食の牛丼をやめて手作り弁当にチャレンジするのはいかがでしょうか。節約になるだけでなく、自分でも知らなかった料理の才能が開花して、セカンドキャリアではホール隣接のレストランで店長になっているかもしれませんよ。
筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
※これまで掲載された「現場視点からみる業界の『人材課題』」のアーカイブをはじめ、マークが付いている「プレミアム記事(有料プラン)」は、https://www.yugitsushin.jp/category/premium/から閲覧できます。
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