- Home
- 競争優位性を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略 (4)
サービス業で業績アップの実績でお馴染みのファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の連載第4回となります。その概要は特に重要なので、バックナンバーをご参考下さい。
ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の名の通り、そのポイントとなる経営資源は5つあり、(1)価格、(2)サービス、(3)アクセス、(4)経験価値、(5)商品です。今回は、(3)アクセスについて解説します。
アクセスとは、一般的に交通の便や情報閲覧などの接続(の利便性)として用いられています。そして、サービス業においては、「立地」がそれに該当しますが、それはリアルな店舗においての話で、広い意味ではネット接続に関するバーチャルな意味も含むことを認識しておく必要があります。(アクセスの良さというワードが、リアルでもバーチャルでも競争優位性に繋がる。)
PS店営業は、古くから立地商売と言われるほど、立地が極めて重要な経営資源として捉えられており、「都心の100mは地方の1,000mに等しい」という表現までされるなど、立地を最重要に据えてきましたし、今もその部分はほとんど変わっていないと思われます。
しかし、その「立地」を判断する際、重要なのは、
(1)制約条件の確認(許認可がおりるか)
(2)商圏の遊技顧客人口(顧客対象人口はどれ位居るか)
(3)ロケーション(背景や位置、特に交通導線)
(4)地型(道路設置面、いびつさ、高低差など)
(5)競合店との比較(上記項目の比較や視認性や駐車の利便性やゆったり感の比較など)
など、単純に地図・図面から判断するのは危険で、必ず現地での確認を要するものであります。
特に、購入額や賃貸額の大きさもさることながら、一度出店を決めたら、容易に撤退ができないほど撤退障壁(投資額、評判、雇用など)が高いので熟慮が必要となります。
以上のように、アクセスの決め手となる要素は、上記のような「立地」にまつわる固定要素が目立ちますが、実は流動的な要素も決して見過ごせない重要な項目となります。(下記)
(6)店舗の視認性の高さ
(7)店舗への入り易さ
(8)駐車・駐輪のし易さ及び配慮(警備員など)
(9)エントランスの印象
(10)通路幅
(11)一人当たりの遊技空間
(12)導線の良し悪し(回遊性)
(13)遊技機案内・説明
(14)店舗レイアウト全般
など、店づくりや店舗オペレーションに関係することも、PS業界ではアクセスのファクターに該当することを認識しなければなりません。
さらに、アクセスとは「接続の利便性」のことであるので、『「顧客」と「店舗(企業)からの提供物」の接続の利便性』が、広義ではその接続の利便性が全て含まれることになるため、
(15)当該店舗(企業)ネットに関する利便性
などまでも含まれることになるので、要注意です。
そして、上記①~⑮の項目が、
顧客に「刺激や感動」を与えるサービス提供領域であればレベルIII、
顧客に「頼りになる」と思わせるサービス提供領域であればレベルII、
顧客に「信用はできる」と最低限の納得感を提供できているのであればレベルI、
そして、顧客が納得できない低品質のサービスを提供しているのであれば、アウトです。
最低レベルI以上でなければ経営資源にはなりません。やはり、感動の領域を提供できると大きな強みの形成が可能になります。
ただし、(1)~(5)については、固定的な要素が強いので、そのシフトを変えるのはコストやエネルギーがかかり、容易ではない部分が多々あります。確かに(8)~(15)の流動性があるファクターについても、それなりにコストがかかると思われますが、固定的なファクターをシフトさせるよりは、身近な打ち手として実現は可能です。
そして、全体を通しての概要としては、この「アクセス」に関して、
市場を制覇しているのであればレベルIII、
差別化が出来ているのであればレベルII、
業界の水準に達しているのであればレベルI、
それ以下は、顧客から信頼されていない範疇に該当します。
今一度、自店の検証と改善にお役立て下さい。
また、立地ビジネスとまで言われてきたPS業界だけに、一度決めたらやるしかないという意思のもと熟慮した場所に出店をしてきた背景があります。
つまり、過去に出店をした場所は、今とは市場環境は違うとはいえ、それなりに魅力的な立地であることは明確です。
したがって、容易な撤退判断をする前に、スマート機時代という新たなPLC曲線の市場に突入した今、金融機関を巻き込み、再生の可能性を模索することは極めて重要と思われます。
オーナーチェンジした店舗の成功例を見るたび、元のオーナーでもやり方次第では同じような成功を手中に出来たのではないか、という考えが浮かぶところです。
今回は以上です。
筆者紹介:田守順(たもり じゅん)
1959年5月3日、北海道帯広市生まれ。アミュゼクスアライアンス代表世話人。中小企業診断士。
明治大学商学部卒、多摩大学大学院経営情報研究科修了(MBA取得)。30歳の時、父親の経営する企業に入社。経営者として3店舗だったホールを10年間で9店舗に拡大(2003年5月終了)。
1999年度日本青年会議所副会頭に就任。2014年から高崎経済大学の大教室で「ベンチャービジネス論」「イノベーション論」を、2019年から明治大学経営学部の大教室で「サービス業の運営管理」の講義を行っている。
- Home
- 競争優位性を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略 (4)