2024.11.28

競争優位性を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略 (6)

サービス業で業績アップの実績でお馴染みのファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の連載第6回となります。本テーマでは今回が最終回となります。その概要は特に重要なので、バックナンバーをご参考下さい。

ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の名の通り、そのポイントとなる経営資源は5つあり、(1)価格、(2)サービス、(3)アクセス、(4)経験価値、(5)商品です。今回は、(5)商品について解説します。

PS店ビジネスとは何か考えると、まずは、時間消費+体験型+娯楽産業ということが浮上します。しかし、それだけではゲーセンや遊園地、カラオケなど多くの娯楽産業と同じ範疇に属することとなり何かが違うことに気がつきます。

そうです、PS店ならではの独特な特徴、つまり射幸性を満たすという要素が加わるのです。ゆえに、PS店ビジネスは「射幸付き時間消費体感型娯楽産業」であると定義できます。

それでは、PS店が消費者に提供しているものは何かと考えると、他の娯楽産業同様に「場所・空間」であることがわかります。

さらに突き詰めると、「PSをプレイする場所・空間」が提供物ということになり、それに関わるモノやコトが提供商品ということになります。

その提供商品は、大きく分けて4つの対象に分類できます。

1)店舗・店舗設備
2)遊技機及び遊技機関係設備
3)提供賞品
4)接客応対

となり、言わばこれらがPS店の提供商品ということになります。

そして、その4つに関係する対応が提供商品の価値に直結してきます。それぞれ、掘り下げて見てみます。

1)店舗・店舗設備
・店づくり全般(外装、内装、デザイン、素材など)
・島設備、通路幅、遊技空間、付帯空間、椅子など

2)遊技機及び遊技機関係設備
・機種構成及び品揃え
・遊技機データ表示機、呼び出しランプ、玉貸し・コイン貸し設備など

3)提供賞品
・賞品品揃え、カウンター機能など

4)接客応対
・顧客が気持ちよく円滑にプレイできるためのスキル

以上のように、遊技の場所・空間に関する全てが、PS店の提供商品を構成していることになります。

また、1)店づくりは9月掲載の「アクセス」とも関りがあり、2)遊技機は7月掲載の「価格」との関わりが深く、4)接客応対は10月掲載の「経験価値」や8月掲載の「サービス」とも繋がりがあります。つまり、提供商品はPS店営業の全てが直接的間接的に関係していると捉えることができます。

そして、上記の提供商品を顧客が安心・信頼して利用でき、市場を支配しているのであれば、レベル III 。消費した金額が公正で納得できる商品提供であれば、レベル II 。フェイクやガセなどなく「正直」な商品提供をしているなら、レベル I 。そして、顧客から信頼されない領域はレベルIに満たないNG領域となります。

最低レベルI以上でなければ、経営資源にはなりません。そして、レベル I 未満の水準はあってはなりませんが、全てがレベル I 以上であれば、レベル II が1つ、レベル III が1つあれば、十分な競争優位性を実現できるとしています。

そして、毎回お伝えしているように、ポイントとしては、

・経営資源の各ファクターを全て最高レベルにする必要はない
・ただし、最低でも各ファクターでレベル I 以上のクオリティは必要
・競争優位性の実現にはレベル III のファクターは1つ、レベル II のファクターも1つは必要

となります。

提供している商品を今一度確認・検証し、新たな商品戦略にご参考下さい。

6月から連載した「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」は、とにかく実践の中で実績を上げる戦略論として、多くのサービス業でも採用されております。

業績アップにぜひお役立てください。

今回は以上です。

 

筆者紹介:田守順(たもり じゅん)
1959年5月3日、北海道帯広市生まれ。アミュゼクスアライアンス代表世話人。中小企業診断士。
明治大学商学部卒、多摩大学大学院経営情報研究科修了(MBA取得)。30歳の時、父親の経営する企業に入社。経営者として3店舗だったホールを10年間で9店舗に拡大(2003年5月終了)。
1999年度日本青年会議所副会頭に就任。2014年から高崎経済大学の大教室で「ベンチャービジネス論」「イノベーション論」を、2019年から明治大学経営学部の大教室で「サービス業の運営管理」の講義を行っている。

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