2023.1.20

選択肢が広がるなかで求められる 「自社で働いてもらうための動機づけ」

昨年、ある企業が20代を中心とした若者2327人に対して行ったアンケートが、話題になりました。ご存知の方も多いと思いますが、ご紹介しておきます。

これは、出世に関する意識調査をしたもので、「出世したいと思いますか」の問いに、「はい」と答えた人が22.4%、「いいえ」と答えた人が77.6%と驚愕の結果となったのです。ある程度歳を重ねた人にしてみれば、「出世したい」と思うのが当たり前で、8割近い若者が出世したくないと思っていることは理解できないかもしれません。もう少し、詳しく見てみましょう。

出世したい理由の1位は、300人以上が挙げた「給料を上げたいから」。2位の「キャリアを積みたいから」の約5倍もあり、ダントツとなっています。出世したくない理由の1位は、「責任のある仕事をしたくないから」で、2位は「プライベートを大事にしたいから」。どちらも回答数は400を超えており、2大理由となっています。これに続く理由は、「目立ちたくないから」「会社内の地位に興味がないから」で、回答数は200強です。

今時の若者は、高給にあまり魅力を感じず、プライベートを重視していると言えるでしょう。

他業種との給料格差が縮小 ホール企業の優位性は大きく低下

以上を踏まえ、パチンコ業界の採用事情を考えてみます。

今ベテランと言われる人たちが就職した時代、パチンコ業界は給料が高いことが最大の魅力でした。例えば、他業界が時給950円だとすれば、ホールスタッフは1200円といった具合です。それに惹かれてアルバイトを始め、接客の面白さなどに目覚め、社員になり、昇格し、現在に至るといった人は、どのホールにもいることでしょう。

時が流れ、最低賃金の見直しが何度も行われたこともあって、今となっては他業界との給料の差が小さくなってしまいました。採用の優位性が弱まっており、ホール企業は、年々人材確保が難しくなっているわけです。さらに、先ほどのアンケート結果からわかるように、お金よりもプライベートのほうが大切だと考える若者が増加。このことに関しては、15年以上キャリアコンサルタントをしている私も実感しています。

転職希望者と話をしていても、「給料はそこそこでいい」「土日は友だちと遊びたい」「地元で働きたいので、引越しはNG」といった希望が多く、これらはホール勤務の実態と相反しているのです。この業界で働きたいという熱量は、下がる一方と言えるでしょう。

まだコロナ禍ですが、社会全体がコロナ前に戻ろうとする傾向があり、有効求人倍率は上昇し続けています。つまり売り手市場ですから、求職者は会社を選べる状態です。賃金、若者のマインド、売り手市場、これらを総合的に考えると、ホール企業が人材を確保するのは簡単でないと言わざるを得ません。

では、どうすべきか。とある企業が行っている手法が参考になるはずなので、お伝えしましょう。

入社後を想定した働き方を思い描く求職者に選ばれる企業の特徴

C社は東京に本社を置き、全国に店舗を構える大手企業。業種柄、慢性的な人手不足ですから、人材確保は半永久的な課題です。地元で働きたいと思う求職者は多数いますが、採用が競合し、他社に当たり負けてしまうことも珍しくありません。

そこで、C社の採った戦略は、“求職者に、「この会社で働きたい」と思ってもらうこと“でした。1次面接は一般的なものですが、その後に社長が力説する動画を見てもらいます。入社から社長に昇りつめるまでのキャリア、これから会社をどうしていきたいかなどを語る動画です。求職者は、C社の根幹を理解するとともに、入社後を想定して自分がどのように働きたいかを思い描きます。これを人事担当者と話し合うのが2次面接。企業側は、キャリアコンサルタントさながらに、求職者にアドバイスをしたり、自社の魅力をプレゼンしたりします。

最終面接をするのは社長。求職者を口説き、入社を促すのです。求職者は事前に社長の動画を見ていますし、人事担当者と濃密な話をしていますから、大抵は入社を決断することになります。

人事担当者も社長も大変な労力がかかりますが、このくらいやらないと“求職者に選ばれる企業“となり得ないということでしょう。ちなみに、C社の同業種では似た戦術を取り入れている企業が増加傾向にあるようです。

ホールの中途採用は他業種から遅れを取っている

一般的な採用は、企業が求職者を選びます。この手法はその逆、求職者が企業を選ぶわけです。選択権が求職者にあるので、企業としては“選ばれないリスク“があるのも事実。だからこそ、選ばれるように努力をしているのです。

ホール企業の中途採用でここまで工数をかけるケースはあまり見受けられません。このように見ていくと、パチンコ業界の採用手法は遅れを取りつつあると言っても過言ではないでしょう。業界を問わないことで職場の選択肢が広がりつつあるなか、今後はより自社で働いてもらうという動機づけが重要になると言えるでしょう。

求職者に選んでもらうためにどうすれば良いのか、どんなストーリーを設計すれば良いのか、考えてみてはいかがでしょうか。

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)

キャリアコンサルティンググループ
マネージャー

大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。

 

 

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