2023.2.26

【レポート】 今後を見据えた広告宣伝ガイドラインの運用

ホール関係4団体(全日遊連・日遊協・MIRAI・余暇進)が「広告宣伝ガイドライン(第1版)」を制定し、広告宣伝に関して全国共通の自主的取組みがスタートした。枠組みとしては、広告宣伝に関するホールからの質問をホール関係4団体でとりまとめて「質疑書」で警察庁に照会してOKの広告宣伝を確認したのち、その範囲を逸脱しないようNGの内容に比重を置いた「ガイドライン」を策定・改定し、ガイドラインに準拠した広告宣伝を全国で行うことで健全化を図っていくという流れになっている。

既報のようにこのガイドラインは、1月25日公開の警察庁通達で「事業者団体による自主的な取組が必要」との考えが示され、その具体的施策として制定された。警察庁通達の目的のひとつに「全国的な斉一性の確保」が示されたため、地域によってはこれまでより「できる広告宣伝」が増えるところもあるが、すでに各ホール団体から発出されている課長補佐のメモでも今回の内容が規制緩和ではない旨繰り返し説明されている。それでも業界の自主的取組みに一定の付託がなされたわけで、全体的な手法をみても「できる広告宣伝」に視点を置いているところがこれまでと大きく異なっている。

ガイドラインの策定を受けて各地域のホール組合では、拡大解釈しないことを条件にガイドラインへの準拠を認めるところがある一方、ガイドラインに関する地域に適した解説や一定のルールづくりがなされるまで個々の判断で拙速な対応を控えるよう伝えているところもある。

とりわけ「できる広告宣伝」の幅が広がる地域、また条例の都合といった独自性がある地域では、急な環境変化や地域特性に対応する一定の取り決めも必要になるため、全国共通といっても具体的な対応については地域ごとに話し合いが進められている状況だ。また、ガイドラインの解釈については難しい部分もあって実際に一部で混乱もみられるようで、ホール関係4団体ではより伝わりやすいガイドラインの改定作業に入っているという話も聞かれる。なお、ガイドラインの違反を通報する仕組みについては全国で一本化されるが、今のところホール関係4団体でその仕組みづくりに取り組んでいる段階だ。

質疑書とガイドラインはホール関係4団体で更新作業が随時行われていくため、仮に誤認識や拡大解釈でガイドラインに抵触するおそれのある広告宣伝が出てきた場合など、NGとなる広告宣伝が増えるのはもちろん、それまでOKだったものまでNGになる可能性も否定できない。まずは各地区のホール組合などから順次発信されていく解説や一定のルールを踏まえた上で、ガイドラインにある質疑書のOKの部分から進めていくことが重要になる。むしろガイドラインに準拠した広告宣伝が全国的に展開されていけば、これからの質疑書によって「できる広告宣伝」の幅が広がるため、現状の大きな課題である地域のファン拡大につながるような広告宣伝も可能になるはずだ。

 

広告宣伝のターゲットの「偏り」が是正される可能性

これまでの広告宣伝の流れをみると、旧通達で隠語的な表現が指摘されてからホールの広告宣伝はインフルエンサーの利用など第三者性が強まっていった。現在はSNS広告が主流になっているが、その中には建前としてホールと一切関係のない第三者がSNSで勝手に予想や人集めをするといった手法もみられるようになった。確かにそうしたSNSの利用は限定的、瞬間的でも即効性があり、現在のホールの広告宣伝費をみても折込チラシやDMがメインだったひと昔前と比べると大幅にコストダウンできているが、ターゲットは若い世代などSNSに明るいファン層に偏っている。日頃から自店を支えている地元客などにはなかなか伝わりにくく、自店ファンの拡大といった本来の広告宣伝の目的にはつながっていない。

なお、SNS上で第三者を装って広告宣伝するステマについては、消費者庁が景品表示法の不当表示に追加する方向で検討を進めており、広告宣伝であることを隠す行為自体に規制が2023年中にもかかりそうな見通しだ。今のところ行政措置の対象などは明らかになっていないが、一般マスコミの報道などをみると「ステマは違法」という考え方が常識的なものになっていきそうな気配もみられるため、それに近いと思われるSNSの利用について懸念があるところは今後の国内情勢にも留意しておくべきだろう。

ともあれ今回の取組みは、「できる広告宣伝」の幅を広げるところに目が向けられているため、全国でガイドラインに準拠した運用がなされていくことで今後さまざまな広告宣伝が適正な範囲でできるようになることが予測される。ガイドラインに記載されている、違法とされるおそれのある表示とは別のところに主眼を置いて、新しい考え方で取り組んでいけば、SNSに明るいファン層だけをターゲットにした広告宣伝から脱却できる可能性も秘めている。現状はエリアの遊技人口が減っていく中で、思うような集客施策も打てないまま縮小するパイの奪い合いが続いているが、本来の広告宣伝のあり方を探ることができれば、これまでよりもっと効果的な広告宣伝費の使い方ができるほか、自店エリアのファンとの関係性も自ずと良化していくはずだ。まずは各地域の組合が発信するガイドラインの解説などをしばし待った上で、ガイドラインに記載されている質疑書でOKの類型から着手していきたい。

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