2022.10.31

人間ドラッカー超入門⑥  GMから調査・分析の依頼

今回は、ピーター・ドラッカーがマネジメントの父と称されるほどに、組織研究の権威となる道を切り開いたGM(ゼネラル・モーターズ)からの調査・分析の依頼を受ける経緯に焦点を当てることにする。

ドラッカーは2冊目の著作である『産業人の未来』を書き上げる頃から、企業組織についての知識を得る必要性を強く感じるようになっていた。この本の中でいみじくも彼自身が我々はすでに組織の社会の中で暮らしていると指摘しながら、当のドラッカー自身が組織についての知識をほとんど持ち合わせていなかったからである。そのため彼は、さまざまな企業の経営者にかけあっては調査・研究の対象にさせて欲しいと願い出たが、いずれのアプローチも不成功に終わっていた。ところが、意気消沈するドラッカーに、突然吉報が訪れる。ドラッカーが34歳の誕生日を迎えた1943年の晩秋、予想だにしなかった電話がニューヨークにいた彼にかかる。その電話はGMの広報部長ポール・ギャレットが副会長のドナルドソン・ブラウンの代理としてかけてきたものだった。ブラウンがドラッカーにGMの経営方針と組織構造について調査・分析して経営陣向けの報告書を作成する仕事を引き受けてくれることを希望しているという内容の電話だった。この時の心境をドラッカーは「それはまさに天の声だった」と述懐しているように、このブラウンからの仕事の依頼は、まさに彼が求めていた企業組織の研究そのものだった。

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