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- 【期間限定公開】省力化を進めて離職率が悪化 適正と思っている人員数は本当に適正?
今回は、少し物騒な話と質問から始めましょう。
時は第二次世界大戦の真っ只中。自国の戦況は思わしくなく、戦闘機で出陣した者の生還率は50%しかありません。装甲が薄すぎることが一因だったようです。
そこで、改善策として部分的に装甲を厚くすることを決定。帰還した戦闘機のどこが損傷しているか徹底的に調べたところ、穴が開くなどしている箇所は主翼と機体に集中していることが判明しました。
さて、あなたが軍の責任者なら、どの部分の装甲を厚くするよう指示しますか? 後半で解説しますので、少し考えてみてください。
ハードの充実によって 在籍社員数はかなり減少
話はだいぶ変わって、というより本題に入りますが、パチンコホール1店舗あたりの在籍社員数(アルバイトを除く)は減少しています。経産省と警察庁が公開した数値に当社の独自調査を加えて集計したデータがあるのですが、これを見ると1店舗あたりの社員数は2010年が10.6人、2023年は8.5人。現在はもっと少なくなっていると予想出来ます。いつの時代も店長は1人ですが、副店長以下の役職者と一般社員が減っているのです。今や、500台規模であれば6〜7人で回すのが普通かもしれません。
なぜ人員を減らしてもやっていけるのかというと、ハードの普及と進化によるところが大きいと思います。各台計数機が珍しいものではなくなり、玉箱の上げ下ろし、玉やメダルの運搬と計数から解放されるスタッフが増えました。景品交換もセルフカウンターが増え、常駐スタッフの人数は減少。もちろん、各台計数機やセルフカウンターを導入していない店舗もありますが、普及率が高くなったことは間違いありません。
また、遊技機も進化しました。スマパチ・スマスロは計数機そのものが不要ですし、スマスロはセレクターエラーとホッパーエラーが物理的に起こりません。スマート遊技機でなくても、パチンコの玉がかりを始めとするトラブルはかなり発生頻度が低下しました。
様々な場面で、プレイヤーが呼び出しボタンを押す機会が減ったわけです。となると、ホールの配置人数は減らせるはずだと考えるのは、ある意味では当然でしょう。
肉体労働は減っても 依然として減らない仕事量
在籍社員数が多かった時代、他業界と比べると高待遇であるにもかかわらず離職する人は後を絶ちませんでした。肉体労働が多い上に休みが少なく、腰を悪くするケースも。体力的にも精神的にもハードで、長期的に勤務出来る環境がまだ整っていなかったと言えるでしょう。
では現在はというと、玉箱の上げ下げなどの重労働は確かに減りましたが、前述のデータから社員1人あたり台数を抽出すると、2010年が34.3台、2023年が56.9台となっています。つまり、対応台数は増加しているのです。クレンリネスなどの作業は「むしろ増えている」と、感じている方も多いのではないでしょうか。
実際に離職したある人に話を聞いたところ、「給与面に不満はないが、ギリギリの人員数でイレギュラーが発生したら回らない。だから、常に誰かが時間外フォローに入る必要があって、休日もフルに消化出来ない。毎日同じ作業にただ追われている感じで先が見えない」とこぼしていました。
近年、多くの企業が従業員の待遇改善に力を入れており、例えば休日数の増加は採用力を高める上でもポイントになってきますが、あまりにも負担が大きい状況が続き、結局は休みが取れず、改善の方向性が見えてこなければ、離職の可能性が高まってしまいます。
企業として省力化を目指すのは当然で、その上で人件費削減を視野に入れることは理解出来ます。しかし、そのことが離職の要因となり、人員不足に陥るというのは本末転倒と言えるのではないでしょうか。
「生存者バイアス」を参考に 理論的な適正人数を
戦闘機の話に戻ります。損傷部分は主翼と機体に集中していることが判明した後で、あなたならどの部分の装甲を厚くするよう指示するか、という問題でした。
直感的に「主翼と機体」と思った人がいるはずです。「敵に撃たれやすい部分を強くしておけば、安全性が高まるだろう」と。
実は、この問題は例え話ではなくアメリカ軍の実話です。そして結局どうなったのかというと、エイブラハム・ウォールド博士の提案により、損傷がなかった部分、具体的にはコクピットやエンジンなどの装甲を厚くすることになりました。帰還した戦闘機の損傷を調べたということは、“そこは撃たれても帰還出来る”わけで、損傷がない部分こそ“撃たれたら帰還出来ない”ということですから。
「生存者バイアス」の代表例なので知っていた方もいるでしょうが、「なるほど!」と納得した人のほうが多いかもしれません。
適正人員を考え、バランスを見極めようとした際には、生産性などを設定し、シミュレーションした理論値がどうなるのかをみられるかと思いますが、「現場」を把握、理解できていなければ、絵に描いた餅になりがちです。
休日数や店舗ごとの業務量と必要な業務スキル。例えば、朝の並び人数、平均稼働、セキュリティ対策などから「早番、遅番それぞれで、どの階層の業務スキルが何人必要か」を割り出して、現場の実態(現状)から目標(理想)とする人員配置へ理論的に近づけていくことが、想定外の採用費、教育コストを抑える“本当の省力化”と言えるのではないでしょうか。

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
※これまで掲載された「現場視点からみる業界の『人材課題』」のアーカイブをはじめ、マークが付いている「プレミアム記事(有料プラン)」は、https://www.yugitsushin.jp/category/premium/から閲覧できます。
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