2023.3.18

加速する店舗数の減少、時流に合わせた意識変化も手探りの状態

全日遊連がこのほど発表した組合加盟店舗の実態調査では、2023年1月末時点の営業店舗数は6,803店舗と前月(2022年12月末)比で54店舗の減少となった。一昨年末(2021年12月末)の7,637店舗に対し2022年12月末は6,857店舗と、昨年1年間で780店舗減と1割近くが減ったが、今年に入っても歯止めがかからない状況が続いている。

全日遊連の非組合員を含めた店舗数は、各種調べなどからすると2月の時点で7,100店舗強とみられるが、GW明けの商戦後は閉店・廃業の加速が予測されるため、5月末には7,000店舗の大台を切る可能性が高いとみられている。さらに来年上期には改刷も控えているため、その辺りまでは閉店ラッシュが続き、6,500店舗ほどで頭打ちするのではという関係者の見方も一部にある。

閉店・廃業を判断するも物件の引受け先に苦慮

ホールの店舗物件に詳しい不動産コンサルタントによると、今後閉店・廃業を考えているホール企業からの相談がここにきて増えているという。M&Aによる営業継続の対象になるのは一部の大型店舗に限られているため、そうした相談は中小規模の店舗に多く、なかなか引受け先が見つからないようだ。中小規模の店舗でも駅前立地でまとまった敷地など条件のいい物件ならディベロッパーが触手を伸ばす可能性もあるが、現状は他業種の引受けも厳しくなっており、一時期は引き合いの多かったドラッグストアも今では手を引いているという。さらに相談の対象になるのは設備老朽化している物件が多く、そうしたところもバトンタッチを難しくしているようだ。

閉店・廃業の判断に至った理由についても、そのほとんどが営業継続にかかる投資対効果を挙げており、なかでも「すでにエリア内の格差が開いているところで強い競合がスマスロを導入して太刀打ちできなくなった」といった話が多いという。スマスロも初導入から数カ月が経過し、中古機市場でも安く手に入るような状況にはなっているが、そもそもユニットの導入が難しいため、実際のところスマスロの中古機はほとんど動いていない。また、総じて新台市場をみると、機械代の予算自体を増やせない中で機歴対応などの比率が上がっており、動きそうな新台を入れたくても以前のようには導入できない状況が続いている。確かにスマスロはパチスロ市場を盛り上げる要因にはなったが、とりわけ資力のない企業にはスマスロの登場が閉店・廃業に拍車をかけた格好になっている。

時流に合わせて意識を変えても見当たらない具体的な策

これまでの勝ちグループだった大手・中堅企業も二極化が進んでおり、互いに競合する店舗が自社所有物件か否かによってその強弱が顕著になっているという。やはりファンに還元する余力を考えても賃料や金利を払う必要のない企業の方に優位性があるのは当然だが、これまでは拡大戦略によってある程度カバーできていた。ただしエリア稼働がここまで落ちてくるとそれも通用しなくなってきているようだ。また、出店意欲がある企業にしても、一定の集客が見込めて出店コストも理想的な物件はほとんどないため、検討対象にする物件の規模や坪単価など、従来の基準を変えているところが多いという。

そうした変化から各企業とも時流に合わせて考え方をシフトしている様子がうかがえるが、その不動産コンサルタントによると、そうはいっても具体的な方策がないのも現実という。エリア集客の低下に加えて機械代予算が重くのしかかっている状況では、抜本的な業績改善策はなかなか見当たらない。商売の原則でも競合がどうしていいかわからないときこそがチャンスだとよくいわれるが、やはり業として投資対効果が見込めなくなっているところに根本的な問題がある。現状の投資対効果を改善するにはファン人口拡大が必須条件になるが、大きな課題である若年層の呼び込みについても、ここ10年で市場規模が拡大した公営競技と違ってオンライン化の選択肢がない。このままいくと少数の企業に集約される寡占化がさらに進むことが予測されるが、少なくとも来年の改刷までは市場のあちこちに再編の火種がくすぶっている。

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