- Home
- 「一本釣り」の美学が経営リスクに 人手不足時代に問われる選考設計
釣りを楽しむ方なら、一度はこういう経験をしたことがあるのではないでしょうか。潮が動いている、魚が回ってきている、条件が揃った「その瞬間」に、こだわりの仕掛けをセットしていたら時合を逃してしまった。あるいは、その日の狙いに合った魚ではなかったからと、せっかくかかったものを逃してしまった。釣り人のこだわりとは時に美学とも言えますが、その美学が食卓を空にすることもあります。
帝国データバンクが2026年1月に公開したデータによれば、2025年の人手不足倒産は年間として初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新。そして全体の7割強が小規模企業とのこと。採れなかったのか、採らなかったのか。いずれにしてもこの数字は、小規模企業が圧倒的多数を占める当業界にとっても、決して「対岸の火事ではない」ことを示唆しています。今回は、対照的な2社の事例から考えていきましょう。
「まず会う」を優先設計したA社 「即断即決」を貫いたB社
現場スタッフの増員が急務となったA社では、応募は来るものの面接数が増えないという課題を抱えていました。状況を整理してみると、特に気になったのは「履歴書・職歴書の提出が面接前」に設定されていたことでした。「とりあえず応募してみよう」という層が、書類準備の手間で足を止めていたのではないか、と。これを踏まえてA社は1次選考の定義を「会社説明会」に切り替え、申し込みを簡単なプロフィール入力のみに変更。参加の敷居を下げ、説明会で興味を持ってくれた人材はそのまま2次選考というシンプルな2段構えにしたのです。さらに工夫したのは、説明会に参加したものの2次選考予約に至らなかった人材へ、スピード感を持って個別にアプローチしたことでした。「迷っていた層」を丁寧にすくい上げることで、選考数の分母を確実に広げたのです。
一方のB社は、狙いが違います。一定水準以上のスペックを持つ人材を、ピンポイントで補強したい。そこで提案したのが、経営層が面接に直接立つという体制です。書類はあくまでプロフィールの確認用に留め、採用の対象を幅広くし、さまざまな人材と実際に会い、会社の想いや今後の方向性、価値観を直接ぶつけます。基本は1回の面接で合否の結論を出し、必要があれば最終面談で条件のすり合わせを行うという、潔い設計です。
対話の「量」を確保する体制が 採用の競争力を生む
冒頭に挙げた、人手不足倒産全体の7割強が小規模企業という数字は、人手不足解消の難しさをそのまま映しています。特に小規模ホールでは、ひとりの退職が現場の負荷に直結しがちです。そして、採用が追いつかなければ、店舗運営の根幹が揺らぎかねません。採用条件面で優位性を打ち出しにくい場合は、状況がさらに厳しくなる可能性も否定できないのです。
こうした市況の中で問われるのは、選考の「質」を高めることよりも先に、対話の「量」を確保できる体制が整っているかどうかです。どれほど精度の高い選考基準を設けても、そもそも会える人数が少なければ、その精度を発揮する機会が生まれてこないはず。採用活動に割ける人員やコストが限られる中でこそ、「何人と話せる仕組みになっているか」を問い直すべきでしょう。出会いの機会を最大化し、会った人材と素早く誠実に向き合う。その積み重ねが、現代の採用市場における自社の競争力になっていくはずです。
「フラット式」選考が引き出す 思いがけない出会い
2社はアプローチこそ異なりますが、共通点があります。「会社が人材を評価する」だけでなく「人材も会社を評価する」という、今の採用市況に即したフラットな視点を選考に取り入れた点です。現在の求職者の多くは、複数の業界・企業を並行して検討するのが当たり前です。認知度や人気度においても、パチンコ業界は他業界と横並びで比較にさらされています。むしろ、後回しにされることが目立つというのが、支援現場での肌感覚です。選考が会社側の都合だけで組み立てられた一方通行では、応募者はあっという間に他社へ流れてしまいます。
冒頭の釣りに話を戻すと、質の高い魚を求めるなら、一本釣りで狙いを絞り込むよりも、その魚がいそうな領域に網を投げ入れる方が可能性は高まるはず。そして投網の面白さは、本来狙っていなかった魚が紛れ込んでくることにあります。つまり、質を求めるなら量を担保する必要があるということ。書類では見えなかった熱量、スペック以上の経験の深さ、異色のキャリアから生まれた視点——そうした「思いがけない逸材」との出会いは、間口を広げる選考フローなくしては生まれません。A社もB社も、この設計変更で応募数・採用数がともに向上しました。
私たちの現場感を率直に申し上げると、「返答が早く選考フローが整っている」企業ほど、求職者へ自信を持って紹介しやすい。これはアドバイザー側の気持ちの問題ではなく、求職者への責任の問題です。「この会社は自分をきちんと見てくれる」と求職者がそう感じるきっかけは、案外シンプルで、対応の早さだったりします。条件面での優位性が出しにくい時代だからこそ、選考フローそのものが「会社の姿勢」を映す鏡になっていると改めて感じています。
自社の選考フローが、求職者にどう映っているか。応募者目線で眺めてみることで、新たな発見につながるのではないでしょうか。

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
※これまで掲載された「現場視点からみる業界の『人材課題』」のアーカイブをはじめ、マークが付いている「プレミアム記事(有料プラン)」は、https://www.yugitsushin.jp/category/premium/から閲覧できます。
- Home
- 「一本釣り」の美学が経営リスクに 人手不足時代に問われる選考設計

ABCが児童養護施設協議会に124万円を寄附
スペック最高峰の王道海遊パチを、大人気コスプレイヤー『えなこ』と盛り上げちゃいます!「PAスーパー海物語IN沖縄6 Withえなこ」
伝統シリーズ最新作が3年ぶりに登場!「PフィーバークィーンⅡ」
セントラルグループがお花見イベント 「さくらまつり」を開催
SANKYO、公式グッズサイト「FEVER STORE」をオープン