2023.7.21

ダイコク電機「DK-SIS白書2023年版 -2022年データ-」刊行記者発表会、昨年の振り返りと現況を解説

ダイコク電機は7月19日、東京・水道橋の東京ドームホテルで「DK-SIS白書2023年版 -2022年データ-」の刊行記者発表会を開催した。「DK-SIS白書」は1年間に起きたパチンコ業界に関わる出来事をDK-SISデータとともに振り返る業界唯一のデータブックとして毎年刊行されており、今回で20冊目となる。なお、2022年度のDK-SIS保有データ規模は141.4万台、SIS台数シェア39.7%となり、全国のシェアの40%近くまで増えた。

冒頭に挨拶した栢森雅勝代表取締役社長は「発刊から20年の節目を迎えることができた。白書で時代の変化を映し出してきたと同時に、業界内だけでなく業界外の方々にもパチンコ産業を認知していただく一助になったと思う。またDK-SIS白書は、業界で大きな変化があったときに一体何があったのか、どう変わったのかというところの理解を助ける部分、またこの先をどう考えるかという部分を見直すのに役立つ資料になっている。変化の記録、変化の先をみるためのお手伝いができたと思う」と述べた。

発表会では同社MS-SIS統括部 プロフェッショナル・首席講師の片瀬宏之氏が、白書の掲載内容である2022年の振り返り、および2023年の状況について説明した。

白書で毎年発表している業界の市場規模は、業界総売上14.6兆円、業界総粗利2.38兆円。コロナ禍以降の2020年からほぼ横ばいで推移しているが、「2022年は6号機の増加でパチスロ業績が下落し、パチンコがそれを補う状況だった。パチンコの負担がますます増えていったために現状はパチンコ業績が下落しているが、2022年からその兆候が出ていた」と解説した。また、総粗利に対する市場全体の遊技機購入費は0.74兆円、遊技機利益が1.64兆円、遊技機購入比率は31.1%。「2022年は新規則機移行で市場の遊技機販売台数が増加し、遊技機価格の高騰もあって遊技機利益は過去最低となった。遊技機購入比率が3割を超えたのも今回が初めて。設備投資やその他費用負担を考えると現状で生き残っているホールも厳しい状況が続いている」とした。

パチンコ業績は良好も稼動貢献週が下落

昨年1年間を振り返ると、パチンコ月間業績の平均値はアウト・売上・粗利とも対前年でプラスになった。年の前半はパチスロ6号機の影響もあってパチンコ月間アウトは対前年で1000個ほど上回っていたものの、後半は6.5号機の登場などによって前年差が縮まっていき、2022年12月の月間アウトは対前年でほぼ同程度になった。

4円パチンコの業績は、アウト1万1,770個(対前年540個増)、粗利3,268円(同343円増)と、粗利が大幅に増加した。コロナ禍前の2019年のアウト1万3,680個、粗利3,202円と比べると、まだまだアウトが回復していないところで粗利だけが戻った状況になっており、結果として遊技時間粗利は1,320円と対前年で80円も増加。直近データとして2023年1月〜6月の業績集計(アウト1万1,090個、遊技時間粗利1,420円)も示した上で、「遊技時間粗利が上がり続けるかぎりアウトの復活はありえない。2023年上期のアウトはすでに2022年を下回っており、パチンコ凋落の結果が如実に出ている」とした。

4円パチンコのタイプ別業績では、特にハイミドルタイプはアウト1万4,340個(対前年1,040個増)、売上2万7,372円(同3,199円増)、粗利3,739円(同527円増)となった。その一方でタイプ別の貢献度評価をみると、全タイプ平均の償却達成率は前年の50.8%から30.6%に下落しており、4円パチンコ全体の業績は良かったものの、償却不能な機種が約7割もあったということが示された。また、ハイミドルタイプの稼動貢献週は10.1週(対前年1.7週マイナス)、総合貢献の累計台粗利は53万7,235円(同6万205円マイナス)に下落しており、「2022年は出玉至上主義一辺倒のハイミドル機が数多く発表され、ほどんどが1個賞球でTOの短い即連タイプばかり登場した。千円スタートが低く、玉の消化スピードが早く、大当り中も楽しめずにすぐに終わるため、遊技時間が短くなっている上にスピード感のある仕様によってアウトも伸びない。そうした機種が数多く登場したことが稼動貢献の結果にも表れている」と指摘した。

パチスロ業績は下落するも償却達成率が向上

2022年のパチスロ月間業績は、2月から完全6号機市場になった影響で月間平均のアウト・売上・粗利はすべて対前年でマイナスに転じ、とりわけ月間平均の粗利は1,993円とSIS集計以来初めて2,000円を切る結果となった。ただし月間推移をみると、6.5号機の登場によってアウトは9月から、粗利は10月から対前年でプラスに転じており、「11月からスマートパチスロも登場して稼動貢献する機種が出てきたため、パチスロ部門のみで粗利を大きく増やすことができている」と説明した。

20円パチスロの業績は、パチスロ全体と同様に下落。6号機が増えていった2020年から2022年の業績推移をみると、売上性能の低下によって20円パチスロの遊技時間売上が落ちているのに対し、遊技時間粗利がそれほど大きく下がっていない状況がみられるため、「遊技機の売上性能が下がると粗利も下がるが、アウトが落ちている機種を甘く活用しているのは、経営者層の利益率(=粗利率)管理が要因と思われる。以前と同じ利益率で管理していると思っていても、遊技時間粗利はまったく違うものになる」として、店舗管理者だけでなく経営者層も遊技時間粗利をみて判断するよう促した。

20円パチスロのタイプ別業績では、ATタイプのシェアが前年の36.2%から54.8%と市場の半分以上まで伸びたものの、アウト・粗利は20円パチスロ平均を下回っており、このことも20円パチスロ全体の業績が落ちた要因になったと説明した。ただしATタイプの総合貢献の償却達成率は前年の20.0%から35.3%に上がり、総合貢献の累計台粗利も28万8,758円から43万3,640円に上がったため、パチスロでも償却できるようになったのは大きなポイントになるとした。ちなみに20円パチスロ全体の償却達成率は30.4%。4円パチンコ全体の償却達成率は30.6%だったため、2022年のパチンコとパチスロの総合貢献の償却達成率はほぼ同じになっている。

危機的状況の4円パチンコ、遊技時間粗利の高騰に警鐘

発表会で片瀬氏は、7月24日(月)から5日間にわたって開催される「MIRAIGATE2023-july DK-SIS Webセミナー『躍動』」に先立つ内容紹介として、4円パチンコ市場が凋落した2つの要因「ハイミドルの遊技機スペックの極端な偏重と台数シェア急拡大」「遊技時間粗利の高騰」についても解説した。

2022年5月から2023年5月の月間業績推移をみると、4円パチンコのアウトは2022年12月に前年同月比100%を下回り、売上は2023年3月に前年同月比100%を切った。さらに2023年5月になると、アウトは前年同月比90%を下回り、売上・粗利も前年同月比100%を切っていることから、4円パチンコは危機的状況になっているとした。

現状はハイミドルタイプが4円パチンコ全体の65%までシェア拡大しているが、片瀬氏は「ヘソ1個賞球で千円スタートが低く、高い出玉性能による甘い仕様によって千円スタートを回せない機種が多い。また、どのメーカーも主力機種で時間アウトを上げる傾向がみられるが、時間アウト5,000個を超えると投資スピードが早くなり、さらに1個賞球によって戻しも少なくなる。そうした機種が市場に多すぎると結果的にファンが追いかけられなくなり、4円パチンコの業績は良くなりようがない」と述べ、メーカーには出玉偏重型の機種以外の遊技機開発にも目を向けてほしいと提言した。

また、同社が以前から警鐘を鳴らしている遊技時間粗利の高騰についても説明。2000年から2022年までの稼動時間と時間粗利の年間推移グラフをみると、2007年から2008年にMAXタイプが登場して市場を席巻していく時期を起点にして、4円パチンコの時間粗利は右肩上がりに推移している。その起点となる時期から時間粗利が上昇していくにつれてアウトは下がっていき、時間粗利とアウトの関係性をグラフでみると「ワニの口」のように広がっている。

こうした状況について片瀬氏は「過去22年のデータから今後のおおよその流れが読めると思うが、4円パチンコの動きをみると、遊技時間粗利が下がらないかぎりアウトは上がらないことが傾向としてわかる。2000年を基準(100%)とした消費者物価指数でみると2022年は105%と、5%しか上がっていないにもかかわらず、4円パチンコの遊技時間粗利は200%ほど上がっている。同じ娯楽費に対して物価指数は5%の上昇でも4円パチンコがこれほど上がっているのはファンにとってかなりきつく、遊べない状況になっていることが理解できると思う」と述べ、過去データからみえてくる課題を意識するよう促した。

さらに、遊技時間粗利の高騰を抑えるためのホール側の考え方として、パチンコとパチスロを独立採算で考える重要性についても提言。昨年のようにメーカーとの関係性をことさら重視する必要性が薄くなってきている中で、機械代回収できない遊技機を減らしていくと同時に、スマートパチスロの人気機種の登場などでパチスロ部門も採算がとれるようになっているため、パチンコ部門を独立採算で考えて花形を作る営業を心がけていけばパチンコも回復していく可能性があるとした。

発刊20周年記念特別記事として業界20年の歩みがわかるデータを掲載

今回の「DK-SIS白書2023年版」では、記念号特別記事として付録「業界20年の歩みと業界を取り巻く環境の変化」を掲載した。業界動向年表(1991年~2023年)やDK-SISデータの年間推移(2003年~2022年)など、業界のこれまでの歩みがわかる注目コンテンツになっている。

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