2024.8.20

【期間限定公開】大谷翔平選手からも学べる採用活動の正しい分析と対策

「プロ野球は分析と対策の繰り返しだ」と知人が言っていました。相手チーム一人ひとりの分析が、バッターを打ち取るためには重要。しかし、バッターも自分の弱点を分析し、対策を練るもの。それが奏功すると、相手チームはさらなる分析をして対策を…。知人の話は言い得て妙だと感じたわけです。

同時に、採用活動にも通ずるところがあると思いました。多くの場合、採用の上手な企業は分析と対策がしっかり出来ており、下手な企業は出来ていませんから。今回は、このあたりを深掘りしたいと思います。

天狗になっている企業に求職者は寄り付かない

採用が上手くいかないことを実感しているホール企業、なかでもその理由を分析出来ていない企業は意外に多いもの。「給与も良いし、休日も整っていて働きやすい職場環境なのに、なぜ採用が出来ないのだ」といった愚痴を聞くこともあります。

過去の記事で取り上げているので詳しくは書きませんが、面接官のスキル不足や、出来て当然のことが出来ていない現場のスタッフなどが原因かもしれません。こういった競合企業と比較しにくいものは、埋もれてしまいがちで分析から漏れてしまいやすいので、その例を2つ挙げておきましょう。

まず、企業と求職者の立場を考えずに一方的な意見を押し付けること。就職難の時代であれば、応募者を揺さぶるために厳しい言葉を投げかけても問題ありませんでした。しかし、今は採用難の時代。「自社は、求職者にとって数ある選択肢の一つにすぎない」と捉えるべきでしょう。選び、選ばれているスタンスでないと、まずもって上手くいかないのです。

もう一つは、ホールで働く方々は自社と競合する店舗はよく理解していますが、商圏から離れると知らない店舗だらけになるということ。自店舗の売上や集客、そして競合を常に考えているからこそ、そこに注目してしまうものです。どれだけ商圏外を知らないかは、各都道府県のナンバーワン企業を自分がいくつ言えるか考えてみればわかります。

ですから、求職者が自社を知っている前提で面接をするのはナンセンスで、店舗数や従業員数、稼働状況、企業理念などを丁寧に一から説明しなければなりません。都市部在住者に入社してもらおうと募集をしている地方の企業は、特に気をつけるべきでしょう。

月8日の公休日は採用のスタートライン

次は、採用が上手くいかない理由を分析出来ているにもかかわらず、対策に難があるケースです。

よくあるのが、人手不足。応募が来ない原因は公休が少ないことだと分析しており、だから公休を増やすことが対策であるとわかっていながら、ギリギリの人数で回しているためにそれが出来ない、という企業をいくつも見てきました。現在、求職者が「応募してもいい」と思うボーダーラインは、月の公休日数で8日です。6日や7日だと、よほどの高給や配属先が家から近いといった“その企業で働く動機”がないと応募が集まりません。

月8日にしたところで、昨今の採用市場で採用の優位性が得られるということではありませんが、少なくとも休日を理由に辞退されるケースが少なくなります。企業の将来性やキャリアアップといったその企業ならではの魅力で勝負が出来るようになり、その内容に共感する人材が採用出来るようになるわけですから、採用活動が成功に近づく可能性が高まると言えるでしょう。

対策に難があるケースを、もう一つ紹介します。社内体制が弱点であると分析し、その対策として適任者を採用しようとした事例です。

社内体制を変えて業績をアップさせた実績がある人が運良く応募してくれ、面接まで順調に進みました。面接官も自社の課題を伝え、求職者も自分の得意分野だと納得して、二人は意気投合。後日、正式な内定とともに、給与や部署などが提示されました。そして、それを見た求職者は愕然として、入社を辞退することに。なぜなら、希望とする給料待遇、役割ではなかったからです。

面接時の話し合いで合致していたはずの条件提示が、違う内容になっていたことに落胆したに違いありません。求められていたスキルやノウハウを発揮出来ない内容と捉え、辞退してしまったのでしょう。

千里の道も一歩から 小さな積み重ねが成功への近道

大企業といえども、創業時にその規模だったわけではありません。大手ホール企業も、始まりはたったの1店舗。分析と対策を繰り返し、徐々に成長していったのです。

前述の公休日に関して、先に公休日を増やして成功した有名企業が複数あります。「公休日は月に8日」と公表して募集をかけ、求職者には実情を説明しつつ近い将来に実現するビジョンを熱く語り、納得した上で入社してもらうという手法を採りました。そして、本当に実現したのです。同様のことを繰り返すことで、より良い企業に成長して規模も大きくなっていきました。

すぐに効果が目に見えるものではありませんし、最初から飛躍的な成長は見込めません。しかし、こういったことの積み重ねは確実に効果があり、いずれ好循環を生み出すものです。人材確保のハードルが下がるだけでなく、離職率の抑制にもつながってきます。

大谷翔平選手は、メジャー1年目のオープン戦で1割2分5厘しか打てなかったことを知っているでしょうか。そこからバッティングフォームを変え、ウエイトトレーニングをし、スタンスを変え、バットを変え、様々な分析と対策を積み重ねました。だからこそ今があるのです。

野球とホールは別物ですが、見習うべきところはあるはず。正しい分析と対策、まずはここから始めてみてはいかがでしょうか。

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。

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