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- 【期間限定公開】海で鯛を釣るか、漁をするか、 時代に即した採用方法はどっち?
一般的に“魚の王様”と言えば鯛を指します。「腐っても鯛」や「海老で鯛を釣る」といった慣用句があるように、古くから価値あるものと認識されてきました。日本人が食べるようになったのは縄文時代からのようですが、今では高級魚。なかでもマダイは、紅白の見た目や言葉の響きもあって、“めでたい”縁起物として食膳に乗ることが珍しくありません。生でも、焼いても、煮ても美味しいので、日常的に食べている人もいることでしょう。
多くの人がスーパーや魚屋で買うと思いますが、海で釣ることも可能。どの海に行くか、船を出すか堤防で釣り糸を垂らすか、仕掛けをどうするか、エサは何を使うかなど多くの選択肢があり、時期によって戦略も変わってくるようです。狙い通りに釣れたときは、さぞかし気分がいいのでしょうね。
さて、採用活動を釣りに例える人がいます。先ほどの鯛を釣る話のように、多数の項目からベストと思えるものを選択していき、応募を待っている姿は、ウキが沈むのを待っているかのようです。自社の要望に合致する優秀な人材が応募してくれ、採用出来た際は、「鯛が釣れた!」と喜ぶに違いありません。
今回は、釣りのような採用方法の是非について考えたいと思います。
優秀な人材の一本釣りは 得策とは言い難い
どんな企業であっても、優秀な人材は欲しいものです。何らかの事情で店長が退職することが決まっているなら、遜色のない人材、出来ればより優秀な人材を採用したいと思うことでしょう。副店長を昇格させれば事足りるのであれば、副店長の後釜を探すはずです。
このような事情があるなら、“鯛の一本釣り”を目指すことは十分に理解出来ます。募集をかける媒体や方法、待遇などを素早く決定し、可能な限り迅速に入社までこぎつける努力をするはずです。現店長の退職日はズラせないでしょうから。
では、現場スタッフの人員が足りておらず、募集する場合はどうでしょうか。人材不足に悩んでいるホール企業のなかには、このケースでも鯛を釣り上げようとする採用担当者が一定数います。「20代で、やる気と向上心があり、リーダーシップもあって、主任以上のキャリアがある人、出来れば高給にこだわらない人がいい」などと言うのです。それはもう、釣るどころか見ることもままならない幻の魚でしょう。普通に考えて、条件に合致する人は絶滅危惧種で、応募すらしてきません。
口が酸っぱくなるほど言っていますが、ここ数年は売り手市場が続いています。求職者は良さそうな企業を複数ピックアップして応募し、より良い企業に入社するのです。それこそ、鯛クラスの人材はほぼすべての企業が業種を問わずに欲していますから、応募から数日で内定が出ることがある意味では当たり前。たとえ前述のホール企業に応募があったとしても、慎重に「この人は本当に鯛なのか」と吟味するあまり後手に回ってしまい、結果的に失敗することが多いのです。
応募者のほぼ全員を面接 ハードだがやる価値あり
一方で、鯛にこだわらずに積極的な採用を心がけているホール企業もあります。釣りというよりは漁に近い方法を採っており、どんな魚が網にかかっても自分の目で確かめるのです。もう少し具体的に言うと、よほど変な人でなければ書類選考では落とさず、即座に一次面接を敢行。会って話してみることがスタートライン、といった方針なのです。
履歴書や職務経歴書ではわからない部分、特に長所が浮き彫りになることが大きなメリット。現状として最も欲しいのは主任クラスだとしても、「景品管理のスペシャリストが見つかった」「デザイン経験豊富ということで店内POPを任せられそうだ」などと、自社にプラスになる人材を確保出来ることがあり、立派な鯛でなくても“鯛の稚魚”や“ワカシ(ツバス)”に入社してもらえることがままあるようです。
応募者のほぼ全員を面接するのですから、担当者の労力はかなりのものとなり、“結果的に無駄”となってしまう時間も生じます。とはいえ、将来会社を背負うかもしれない卵を入手出来るうえ、その卵が競合他社に流れるのを防ぐわけですから、労力に見合う価値があり、行うのが当然という認識のようです。
SNSなども考えれば 一次面接はかなり重要
市場全体で考えて、釣りタイプと漁タイプのどちらに分があるかというと後者です。時代にマッチしていると言い換えてもいいでしょう。
他業界も含めて大手と呼ばれる企業は、書類で落とすことはあまりありません。一次面接でふるいにかけざるを得ないのですが、求職者に好印象を持ってもらえるように接します。友達に話したりSNSで発信したりするのが当たり前ですから、お断りした人から広まる情報が以降の採用にプラスになるようにとも考えているのです。
逆に言えば、釣りタイプは大多数を書類選考で落としてしまうので、以降の採用につながることはありません。鯛を目標にしていても全く釣れず、結局は雑魚で妥協せざるを得ないこともあるでしょう。
ちなみに、話の途中に出てきた“ワカシ(ツバス)”は出世魚です。地方によって名称が違いますが、成長するとイナダやハマチなどと呼ばれ、最後はブリになります。魚は鯛だけではありませんから、自社にはマグロやヒラメなどがバランス良くおり、会社そのものが成長・出世するのが一番なのではないでしょうか。
筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
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