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- その「正論」は逆走ではないか? 早期離職を招くベテランの独善
2026年4月から、自転車の交通違反に対して「青切符(反則金制度)」が適用されることになりました。信号無視や一時不停止だけでなく、歩道での通行方法違反も厳格化されます。ルールを守らない自分勝手な振る舞いに、公的なペナルティが課される時代が来たのです。
先日、あるパチンコ店の開店前、少し考えさせられる光景を目にしました。入場待ちのお客さんが、スタッフと誘導員の指示に従って歩道の端に整列していたのですが、そこへ自転車に乗った通行人が「並んでいる奴らが邪魔だ!」と高圧的にクレームをつけ始めたのです。スタッフは誠実に対応していましたが、私は強い違和感を覚えました。というのも、その通行人はそもそも歩道内をフラフラと蛇行しており、客観的に見れば彼自身の方がよほど危険な走り方で、迷惑だと感じたからです。しかし、本人は「自分は歩道を走る権利がある」という一点に固執し、周囲を攻撃していました。
この「自分の正しさを盾に、他責にする姿」は、中途採用の早期離職トラブルにも通ずる部分がありそうです。今回はキャリアのあるベテランの事例から見ていきたいと思います。
「成功体験」にしがみつく ベテランの悲劇
今回取り上げるのは、40代前半で店長経験も豊富な柴田さん(仮称)の事例です。ある日、業界で再度チャレンジしたい、と転職相談に来た柴田さん。これまでの経歴を伺っていくと、彼は中規模展開するS社で店長を経験し、営業幹部とスタッフ育成のあり方を巡って衝突した末に退職を決めた、とのこと。その後、実績を買われてT社に店長候補として入社するも、わずか数日で「こんなレベルの店ではやっていられない」と早々に辞めていました。
「スタッフの意識が低すぎて、報連相すらまともにできない。そんな店舗で業績を上げることなど、到底不可能です」と、そう声を荒らげる言葉の端々からは、上手くいかない原因をすべて周囲の環境や部下のせいにしようとする、強い他責の念を感じてしまいました。柴田さんは確かに経験豊富で、実績も目を引くものがありました。しかし、その有能さゆえの成功体験にしがみつき、新しい環境でもそれだけが正解だと信じて疑わなかった側面は否定できません。自分の基準に合わないものをすべて間違いと決めつけ、自分を環境に合わせる努力を放棄していた。そう言えるかもしれません。
歩道を自転車で蛇行しながらクレームを叫ぶ通行人の姿と、どこか重なります。自分の正しさを疑わないまま環境に牙をむき、周囲との摩擦を生み続けた先に待っているのは、孤立と退場です。
役割の噛み砕きが ミスマッチの防波堤となる
こうした振る舞いは、本人の性質やマインドが変わらなければ、どうにもならない側面があるのは事実です。恐らくT社は、柴田さんに「即戦力」という高い期待値を持って採用したのでしょう。ただ、自社の課題をあらかじめ具体的に伝え、柴田さんが自社の良し悪しをすべて飲み込んだ上で、役割と責任を自覚し、覚悟を持って決断したのか。その点まで、選考段階で確認しきれていなかった可能性も否定はできません。
マネジメント経験が豊富で実績のある人材を採るなら、「うちは今、スタッフのレベルアップが急務。だから君の経験視点で、彼らを引き上げてほしい」といったように、組織の課題を役割として明確に定義し、合意しておくことが、双方のミスマッチ予防につながってきます。
また、面談の場で現状の課題を率直に開示することは、相手を試すことにもなります。高い基準を持つベテランほど、自社の弱みを正面から語る企業の姿勢に信頼を感じるものです。これが丁寧に行われていれば、柴田さんの目に映った低い水準は不満の種ではなく、自らが向き合うべき仕事であり、解決すべき責任として認識できた可能性もあります。受け入れ側が現実を丁寧に伝えれば伝えるほど、求職者は自分がやるべきことを具体的に描けるようになるのです。期待値を言語化し、役割を細かく噛み砕いて伝える。それは同時に、企業側がこの人材と本気で向き合うという姿勢を示すことにもなります。求職者は、思っている以上に企業の姿勢を見ているものです。
早期離職をしょうがない で終わらせないために
採用コストや人件費が高騰している今、ミスマッチによる早期離職は、本来、企業にとって時間も資金も無駄にしてしまう深刻な事態です。もちろん、戦略的に人材の入れ替えを望むケースもありますが、予期せぬ離職を避けたいと願うのが、多くの現場の本音でしょう。受け入れの初期段階で、自分の正論を押し付けるのではなく、まずは環境を知り、そこから改善していくという姿勢を、選考を通じてどこまで共有できるか。それが自身に与えられたミッションだという理解をどこまで得られるかが、成否を分ける鍵となります。自転車のルール改正も、罰則を設けること自体が目的ではなく、道路を利用するすべての人が安全に共生することが目的です。組織においても、それは変わりません。見た目の実績や経歴の華やかさに引きずられず、この環境でどう動けるかを問う場面を、選考フローに意図的に組み込んでおく。そのひと手間が、採用の質を変えていくと改めて感じています。
実績に期待するからこそ、厳しい現実を共有し、共に解決していく姿勢を問う。現場の課題や期待する役割をどこまで具体的に伝えきれているか。この問いに向き合い続けることが、採用した人材が長く活躍してくれることへの、近道になるのではないでしょうか。

筆者紹介:嶌田堅一(しまだ・けんいち)
キャリアコンサルティンググループ
マネージャー
大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。これまで2,000人以上の支援を行っている経験・実績豊富なアドバイザー。
※これまで掲載された「現場視点からみる業界の『人材課題』」のアーカイブをはじめ、マークが付いている「プレミアム記事(有料プラン)」は、https://www.yugitsushin.jp/category/premium/から閲覧できます。
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