2024.1.26

「広告・宣伝」と「のめり込み・依存防止対策」の2本立て

1月19日の全日遊連全国理事会で行われた、警察庁保安課の松下課長による講話は、興味深いものだった。全文はこちらの記事からお読みいただくとして、ここでは2022年からの過去3年分を比較していきたい。

今回の講話で特徴的だったのは、なによりも分量が少なく、内容が絞り込まれていたことだ。これまでは、遊技業界(あるいは、ぱちんこ営業)の健全化に資する、様々な観点を提示していた。遊技業界に携わる者(あるいは、ぱちんこ営業者)が取り組まなくてはならない事項を、頭のてっぺんから脚のつま先まで、詳細に挙げるのが通例だった。

だが、毎年1月に行われた講話を過去3年分遡ってみると、行政が要望する取り組み項目が年々絞り込まれていることが伺える。

コロナ禍の真っただ中で、かつ旧規則機の経過措置期間が満了を迎えることになった2022年1月は3点で構成され、A4で4ページ(5ページ目に1行だけはみ出しているが)だった。

1. 旧規則機の撤去
2. 撤去した旧規則機の不適正処理と、新規則機の不正改造
3. のめり込み・依存防止対策

コロナ禍が落ち着きを見せつつあり、スマート遊技機(スマスロ)の導入で業績回復の期待が高まる2023年1月には、講話直後にガイドラインが発出される「広告・宣伝」が加わった。項目が増えたこともあろうが、A4で5ページ半へと増えた。

 1. 広告・宣伝の在り方
 2. のめり込み・依存防止対策
 3. 営業に絡む違法な事犯(不正改造、賞品買取)
 4. 撤去済遊技機の廃棄処理

そして、社会全体はコロナ禍から立ち直りを見せているものの、スマスロに続いて市場導入されたスマパチが芳しくなかった2024年1月は、遊技機の廃棄処理がなくなって再び3項目となり、A4で3ページだった。記憶しているなかでは、最も量の少ない講話だったのではないだろうか。

1. 広告・宣伝
2. のめり込み・依存防止対策
3. 営業に絡む違法な事犯(不正改造、賞品買取)

今年の講話を、それぞれの項目で見てみる。

ひとつ目の「広告・宣伝」では、『あえてガイドラインをすり抜けようとしているものがある』『第三者の立場を装ってSNSで遊技機の設定状況を示唆する』と具体例を示した。行政としては現在のやり方を続けていきたいとの意向を示しつつも、『行政として厳しい対応をとらざるを得なかったことを踏まえると』として警告した。

二つ目の「のめり込み・依存防止対策」は、(初めてだと思うが)ギャンブル等依存症対策推進基本計画が『来年度でその対象期間が終わるため、今後、計画の改定に向けた作業が進められる』ことに触れた。そして、自己申告・家族申告プログラムの導入率100%を要望している。団体別で見れば、日遊協が加盟店舗のほぼ100%に導入されているのに対して、全日遊連ではそうではない現状があるがゆえだろう。それにしても、100%というのはなかなかなハードルではなかろうか…。

最後の「営業に絡む違法な事犯(不正改造、賞品買取)」だが、遊技産業健全化推進機構の名前がここで出てくる。『警察として引き続きその活動を支援していきたいと考えている』と、またもやクギを刺された。ちなみにゴト被害の減少や業況の悪化を受けて、機構の予算は縮小傾向にあり、活動規模も漸減状態にならざるを得ない。

そして、今回の行政講話で特徴的だったのは「貴連合会」という言葉の使い方である。

2023年までは『貴連合会が中心となって』や『貴連合会をはじめとする業界全体で』『貴連合会においては(中略)業界をリードして』が散見され、業界全体に対する全日遊連への期待が示されていた。しかし2024年の講話では、行政からの期待が薄まったのかはまったく窺い知れないが、そのような文言が出てこない。

いずれにせよ、業界に帯する行政の継続的な関心が「広告・宣伝」「のめり込み・依存防止対策」の2点であることが確認できたことが、今回のポイントであろう。

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