2023.8.15

政治と、どこまで関わり、なにに関わってもらうのか

政治との関わりが深くなっている。

政官財と言われるように、産業は政治や行政と三位一体で進むことで、維持発展できる。もちろん、贈収賄に代表される癒着はもってのほかだが、一定範囲内の情報共有や意見交換がなければならない。また政官財のトライアングルは、ジャンケンによく例えられるが、うまい具合のバランスの上に成り立っている。

遊技業界と政治の繋がりはいま、基本的に「遊技産業議員連盟」を通じて、与党である自民党との繋がりを深くしている。議連の名称は、2005年の発足時は「遊技業振興議員連盟」だったものの、換金問題の法制化を目的としたことで2014年に「時代に適した風営法を求める議員連盟」へと改称された。そして昨年、2022年に再び「遊技産業議員連盟」へと再改称されるに至っている。

隣接する議連としてIRカジノの推進を目的とした国際観光産業振興議員連盟がある。ほかにも名称だけではなにを対象としているのか分かりにくいものもあるのが現実だが、先祖返りのような名称変更では議連の目的が見えにくい。もしかしたら、わざと見えにくくしているのかもしれないと勘ぐってしまったりもする。

2014年の改称時には、換金問題の解消を目標に掲げた余暇進がなんらかの影響を与えたのは間違いないだろう。実際、余暇進の渡邊洋一郎理事(弁護士)が、遊技場営業における風営適正化法の課題や限界点を指摘し、遊技業界に特化した法律としての業法制定を目指す意義を、政治家に何度となく説明していた。

となると、2022年の再改称時には、どのようなことがあったのか。おそらくだが、簡単ではない業法制定や現行法の改正(性風俗との分離なども視野に入れているだろう)よりも、現行法内での運用の拡がりを行政に求める方向へシフトしているのではないだろうか。スマート遊技機、特にスマートパチスロの開発導入に際しての行政の姿勢や、広告宣伝に関する業界団体への心遣いを見るにつけ、主なる業界団体が現在の立ち位置でよしと判断していることを示しているようだ。

また、議連および政治家からも遊技業界への関心がより一層高まっているとも聞くが、それはまさに選挙における票田という側面があるからだろう。業界側の政治連盟である全日本遊技産業政治連盟は現在、都道府県ごとの支部設立を目標とし、支部ごとに最低満たすべき人数を設定するだけなく、全体の人数底上げを図ろうとしている。言うまでもなく、先述した選挙協力に向けた行動であり、業界の代弁者を次回こそは国会へ送ろうとする動きだ。

ただ課題なのは、議連および業界の代弁者になにを託すのかである。「業況を良くしてほしい」などという抽象的なものでなく、「なにをどうしてほしいのか」を明確に示すことが求められる。IR議連が民設民営のカジノという、それまでの法律にはなかったビジネスを日本で開設しようとしたように、現行法令に抵触するからといって黙ることなく、要求すべきことは要求するという姿勢を見せてもらいたいのである。

筆者紹介:伊藤實啓(いとう みつひろ)
株式会社遊技通信社 代表取締役。1970年生、東京都出身。北海道大学大学院経済学研究科修了後、財団法人余暇開発センター(現、公益財団法人日本生産性本部)にて「レジャー白書」の編集およびギャンブル型レジャー産業の調査研究に携わる。祖父が創業した株式会社遊技通信社に入社し、先代社長であった父の急死に伴って代表取締役に就任し、現在に至る。一般社団法人余暇環境整備推進協議会 監事、中小企業診断士および認定経営革新等支援機関、国士舘大学経営学部非常勤講師としても活動しているほか、静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科博士後期課程にも在籍中。

このページの内容をコピーすることはできません