2024.1.5

2024年は大規模修繕の年

遊技場軒数は1995年(平成7年)の18,244店舗(警察庁資料調べ)をピークに約28年経った現在では7,000店舗を割り込むまでに減少している。急激にではないが、戦後ここまで軒数が縮小したことは過去にはない。大きな要因として連綿と続く設備投資や機械代の高騰など、先の見えない「減」の進行に不安を抱いている関係者は多いはず。しかしこれだけ「減」が色濃くなっても、パチンコ業界には先人から受け継がれた「したたかさ」があり、それはいい意味での「鈍感さ」と思っている。

パチンコ業界の歴史を少しずつひも解くと見えてくる「したたかさ」。パチンコから創業という企業もあるが、他業種から進出した企業も少なくない。また施設規模の転用が利くことからその時代のニーズにあったレジャーからの転進(映画館、ボウリングからパチンコ)も多かった。
逆に他業種はこの転進例があまりないため、パチンコ産業は閉鎖的な面を持ち合わせながらも、他業種のいいところを吸収、模倣する術に長けているがゆえに巨大産業に成長できたのかもしれない。

今年は約20年ぶりとなる改刷のタイミングとなるので、2004年当時の業界での出来事をもとに分野別の動向予想をしてみたい。

7月に新規制施行に伴う経過措置を中心に業界全体が慌ただしかった2004年。みなし機撤去、新海物語の認定、中古機流通要綱の改正、不正機問題、カジノ構想の加速化、警察庁が示した換金行為に関する回答、そして改刷など。この年の後半から続々市場投入されたパチンコ新要件機が好調なスタートを切り、パチスロは一時代を築いたAT機が急速に姿を消す一方で、ST機が隆盛を極めた。また納品時にメーカーが釘調整を行わなくなるなど遊技機環境も大きい変化があった。

これだけ書き出すと、今年は遊技機の大幅な変化が見えてこないので「改刷」が一番大きい課題かと思えてしまうが、実際はそんなことはなく市場規模が縮小したなかであれば、直接お金を生まない設備投資はかなりの負担となる。簡単ではあるが今思いつく2024年の市場動向といえばこんな感じではないだろうか。

<パチンコ>
販売、稼働がいまひとつ振るわないパチンコ。2023年4月より投入開始となった「スマパチ」は年末の話題機種であった「eシンエヴァ」の導入前でパチンコ設置台数に占めるシェアは4%弱。おそらく導入後にシェアが急上昇することは予想しがたい。
また2024年3月から導入予定のLT機も、発表されたタイトルにあまり新鮮さは感じられない。この手の節目では常に先頭に立っているSANKYOのタイトルがないところが個人的には期待感をさげているようにも感じられる。もしかすると一部で噂となっている夏以降の内規改正に向けた動きをしているのか。スマパチのシェア上昇が進まない要因はヒット作の不出やパチンコの不人気などもあるが、一番は設備投資がかからず、スマパチと出玉性能にさほど遜色がない「P機で十分」というのが本音ではないだろうか。

<パチスロ>
2023年上半期から市場支持を確固たるものにした「スマスロ」。4月に登場した「スマスロ北斗の拳」の初動は業界人が予想もしなかった数値を記録。販売台数も現時点では84,000台だが、変わらずスマスロ人気を牽引している。その影響でスマスロ(ユニット設置率)は約27%まで拡大、販売台数シェアは3月まで増産ばかりだったが2023年における総販売台数の6割弱はスマスロだった。しかしユニット設置シェアからみれば、スマスロからスマスロへの入替が多く、性能の優劣が生じている。また今年末には「マイジャグラー」の認定があるため、過半数を超えるスマスロの市場構成にはもう少し時間がかかるかもしれない。ここでも注目は日工組メーカーである「SANKYO」。あくまで噂ではあるが別会社のパチスロ開発関係者にアプローチをかけているとかいないとか…。

<設備投資>
当初のスマートユニットバブルで序列が変わるかと思いきや、遊技機の適合率が上がらず販売計画にもだいぶかい離があった感のある設備メーカー。改刷がひとつの山場とみているが、2023年末時点でホール企業から「改刷」の問い合わせが殺到しているという話は聞こえてこない。いろんなことが推測できるが、日々の営業でそこまで手が回らないのか、あるいは年明けに転進を考えているのか、それともなんとかなるという独自の「鈍感さ」なのか…。

全国にある約1,000店舗はいまだに「スマート遊技機」を設置していないそうだが、「改刷」のタイミングで転進や廃業を選択し300店舗前後となるかもしれない。

ちなみにホール軒数が激減するのは2006年(平成18年)から2007年(平成19年)となり1年で約1,100店舗が閉店となった。2004年(平成16年)からとなれば約2,000店舗が閉店した。過去の傾向からすると市場規模に大きな変化が生じるのは2025年以降になるかもしれない。

2024年は建物に例えるならば、「大規模修繕」となり、設備投資が中心となることと、遊技機の適合率の低さも続き、新台販売も停滞(パチンコ、パチスロともに90万台の計180万台と予想)する。となれば遊技機への投資は極力控えて2025年に向け備えの1年となるのではないだろうか。

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